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「こちらはいかがですか?」
ぼう、としていると目の前に白いタキシードが差し出されていた。
タキシードってほぼ白で決定じゃん、選ぶ必要あるの?
と思っていた数分前の自分を否定したい気持ちだ。
たしかにドレスに比べたら型は少ないとはいえ、タキシードも色の組み合わせによってはガラッと雰囲気が変わってしまう。
"結婚式は新婦様だけではなく、新郎様も主役ですから"
と言ってくれた目の前の男性コーディネーターさんにお礼を言いたい。
「白を基調にしますが、薄めの水色のネクタイにすればめりはりもついていいと思いますよ」
「へえ……そうなんですか」
「新郎様は青系統が好きだと、新婦様からお伺いしたもので(笑)」
「あはは…」
コーディネーターさんがさくさく進めてくれるおかげで、結婚式とお色直し後に着るタキシードが決まった。
「新郎様」
「はい?」
「新婦様のお色直し用のドレス、お選びになるんですよね?」
「あ、はい、そのつもり…です。」
「コーディネーターから連絡があって、そろそろ来て欲しいとのことです。」
どうやら梓もウェディングドレスは選び終わったらしい。
座っていた椅子から立ち上がろうとして、気づく。……俺、タキシード着たままじゃん。
「わかりました。…あ、でも、タキシード着たまま…」
「そのままで大丈夫ですよ。お色直しのためのタキシードですし、新婦様のドレスで合ったものを選びやすくなるかと。」
「あ、そっか…ありがとうございます」
然程遠くない距離を歩いて、梓のいる大部屋に着く。大きく4回、ドアをノックして、コーディネーターさんはドアを開けた。
「失礼します。新郎様をお連れしました」
「ありがとうございます。」
「それでは、俺はこれで。」
お世話になった男性コーディネーターさんにお辞儀をして、出て行く背中を見送った。
梓の担当であるコーディネーターさんが見つめる先には大きな更衣室があった。
「新郎様。新婦様が一つ、ドレスを見てほしいとおっしゃっていましたよ。もうすぐ準備が終わると思いますので、お待ちください」
「わかりました」
用意された椅子に座ってじっと待つ。
どんなウェディングドレスにしたんだろうか。
どんなドレスなら梓をもっと綺麗に見せられるのだろうか。
そっと俺は目を瞑った。
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こん - 無理しない程度に頑張ってください!応援してます! (2018年10月9日 18時) (レス) id: bc3ee8c138 (このIDを非表示/違反報告)
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