May all your dreams come true...【本編】 (ページ16)

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Fate ページ16

「要らない…」

救急コールを行う奏斗の手が、掴まれる。
倒れていた少年が、通話を切ろうと腕を伸ばしてきたのだ。

「意識があるんだね…君、名前と年齢は？いま救急車を―――「要らない。俺の事なんか、ほっといてくれ…」

途切れ途切れの呼吸は、どう見ても重傷者だ。怪我人をこんな所に置いておけば、命に係わる。

「そうは行かないだろう？！どう見たって君は―――」
「俺は―――国籍もない、捨て子だから」
「えっ……って！ちょっと…君！！しっかり！！」

傷みと失血で再び意識を失った少年に、奏斗は声を上げて呼びかける。
奏斗の携帯GPSを辿って到着した救急隊に事情を説明して少年を引き渡すが、完全に通りがかりの奏斗には彼の情報は一切分らない。

「身元引受人……？困ったな―――知らない子だし。とりあえず、うちの系列の大学病院に運んで下さい、あそこなら知り合いもいるし……今回の身元引受人(キーパーソン)は俺で良いです。未成年だけど…居ないよりマシなら」

担架に乗せられた少年は、薄っすらとつながった意識の中で、声を聴く。
厄介事に巻き込まれる前に、早く逃げ出したかったのが本音だが、少しでも動けば腹部に激痛が走り、声を出そうにも腹圧をかけられず、蚊の鳴くような彼の“声”など、この騒がしい現場の“音”にかき消されてしまう。

少年は、激痛に耐えながら頭を動かして見た……慌ただしく動く警察と救急隊と…彼らに話をする月白色の髪の少年の姿を。

「俺は、聖倭大学付属高等専門学校３年の知念奏斗……」

(―――奏斗……？)

その時には、まだ気づきもしない。
これからの彼の人生に深く、大きく関わって来る事になる、男の名の一つとなるのだ―――。

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