幸せな家族のはなし３ (ページ41)

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［１０－２］ページ41

翔side

「智にぃ」

「ん？」

ねぇ、智にぃ。

昔の話……なんてしたくないけど。

けど、あの日からは
随分と時間が経ったよね。

あの約束の日から
たくさんの日々を過ごしてきたと思わない？

「ふふ」

「んー？どうしたの翔」

ね、智にぃ。

実はあの日ね。俺聞いてたんだ。

……叔父さんと、智にぃの話。

あの日さ、1階から2人の声がしたから
何話してるんだろうってリビングに行ったの。

けど、実際は俺が思ってるよりもずっと
大人な話をしてて。

結局そのまま聞いてるだけだったけど。

でも、嬉しかった。

正直あの頃って本当に色々酷くて、
自分を奮い立たせるのに精一杯でさ。

雅紀達も今よりまだまだ子供だったから大変で、
もう何も考えたくないって思って過ごしてた。

だけど智にぃは俺なんかより全然強くて。

あの日、確かに智にぃは
大きな決断をした日だったと思う。

叔父さんを何とか説得させて
自立して、強い意志で思いを伝えて。

それで叔父さんのこと説得出来たときなんて
涙が止まらなくて必死で声押し殺したりしてた。

そのあとはすぐに部屋に戻ったから
それ以降の話はわかんないけど。

ただ確かなのは間違いなくあの時の智にぃの想いは
今でも俺の根底に深く積まれてる。

そのせいで智にぃの負担を減らそうって
考えいきすぎちゃうこともあるけど。

だけど、いつだって
言いたいことは決まってる。

「智にぃ」と呼べば合う目。

いつもなら言いよどみそうになる気持ちも
今は不思議と一途な気持ちだけしかなかった。

「ありがとう、智にぃ。
ずっとこの家族を守ってくれて」

「え……」

俺の言葉に、智にぃの撫でていた手が止まる。

笑っていた表情も驚いた顔で固まって。

だからそのぽかんと
マヌケな顔をした智にぃの代わりに

「これからもよろしくね。智くん」

今度は俺がとびっきりにはにかんで見せた。