［２−１０］ ページ20
雅紀side
「雅紀ー……ちょっとでいいから回ってー……」
……こりゃ無理だな。笑
全くもう。
顔色悪いんだから寝ててよ。
「はぁ」
仕方ない。
翔にぃの為に、
ちょっとだけ意地悪してやろうか。
赤信号で止まったとき、ほんの少しだけ声を低めて
真面目な顔で翔にぃの方へ顔をむける。
「翔にぃ。そんな帰りたくないなら病院行こうか。
それなら智にぃも許してくれるよ」
「え」
途端に翔にぃから声が止まった。
それから嫌そうに眉が寄っていく。
「遠回りしたいんでしょ？
病院行けばちゃんとした薬も貰えるし、一石二鳥で」
「や、雅紀、ま、待って」
ああ、急に起きようとすると危ないよ。
起き上がろうとする翔にぃを片手で止めて、
知らないふりでウィンカーを右へ出す。
家は左だけど、翔にぃなら分かるだろう。
右に曲がると病院の行き道になることを。
ムッと俺を見つめてくるけれど見てやらない。
相手にしてませんよーってあしらってやる。
そしたら青信号になる直前。
「はぁー……」って、翔にぃがため息をついて
ぐったりとまた助手席へ体を預けた。
「雅紀……」
「んー？」
「家、帰る」
「遠回りは？」
「……やだ」
「よし。笑」
少々ずるい脅し文句かとも思うが
大成功ならばそれでよし。
ウィンカーを左へ出し直して
青信号になったのを確認して発進させる。
「じゃあ真っ直ぐ帰るね。
あ、寝れるなら寝てていいから」
諦めた翔にぃの忙しない胸元を
ポンポンと叩いてやればゆっくりと目を閉じる。
次第に呼吸がハッキリ聞こえてきて
横目で見れば翔にぃはぐっすり眠っていた。
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作者名：あやりゅ。 | 作成日時：2019年6月19日 0時
