違恋 (ページ9)

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｢座って、｣

連れてこられたのは1度しか来たことない深田の家。

深田の家は大学から30分以上かかるし、私と湧の家からは真逆だからって。でも1度だけ、20歳になって酔った深田を送りに来た時以来だ。

深田の家に着くまではお互い一言も発さなかった。

深田が切符を買ってくれて、それを渡されるがままに電車に乗った。

ずっと握られた手は暖かくて、もっと泣きそうになった。

｢あのさ、ごめん、俺どうしたらいいか分かんなくて｣

私にしっかり目を逸らさずに向かいに座った深田はそうちゃんと私に伝えた。

｢いつ？｣

｢この前、湧くんがAをバイト先まで迎えに行った時｣

だからか。その日は深田が珍しく酔った日だった。

｢俺、Aの気持ち知ってたのに、、ごめんな、｣

やっぱり深田は優しい。

｢私こそ当たっちゃってごめんね、｣

｢A、｣

なぜか深田も泣きそうで、また溢れ出した涙を今度は止めることなんてできなくて崩れながら泣く私に深田はこっちにきて、私を強く抱きしめてくれる。

｢ごめんな、悲しいな、、｣

｢だいじょーぶっ、私はだいじょぶだからっ、｣

私はこの日失恋をした。

平凡な、、幸せな彩りを壊す時は一瞬だった。

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