時の静けさを ページ15
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どんなに悲しくても、どんなに辛くても、
時間は進む。
変わったことといえば、私の横にいる人が湧から深田になったこと。
結局、大学の学部が一緒だから湧と会わないってことは無理で前と変わらずに3人で受ける講義は唯一前と同じだった。
「まじ、ねみぃ、」
「あれ、昨日夜更かししたの?」
「あー、彼女と電話してたら盛り上がっちゃってさ、」
「あーね、そういえばさ、もうすぐあの映画やるよね、湧くんが言ってた」
こうやって、湧が彼女の話を持ち出すと、話題を上手く変えてくれるのも深田で、深田には一生頭が上がんないなって。
結構な頻度で更新される湧の彼女とのストーリーや投稿にも慣れてしまっている自分もいた。
前までは私の居場所だったのにとは決して口には出せない。
「Aバイト行くかー、」
深田と以前は週1程度でしか被っていなかったのに今では週3被っていてほぼ毎日を深田と過ごしている。
「今日もさ、うちくる?」
湧の家に行かないようになってから通い始めた深田の家はあまりにも今の私には居心地が良くて、ほぼ居候じゃんってくらいには入り浸っている。
「いく、」
「ん、じゃあバイト頑張りますか、」
そう言って、男子更衣室に入っていった深田の背中に。
「ありがとう、」って心の中で呟いた。
時の静けさは心を何色にも染めずに、ただ時間だけが進んでいく。
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作者名:にゃん | 作成日時:2023年3月23日 18時