三十八話「希望と絶望」 ページ39
樋口さんが谷崎さんに銃を向ける。
「谷崎さん危ない!逃げて!」
震える喉から必死に絞り出して出した声。
でも間に合わなかった。
銃が火を吹き、破裂音が響く。
……でもその次に聞いた音は、血飛沫の舞う音ではなかった。
どちらかと云うと、銃弾が床に弾かれるような音だ。
恐る恐る目を開ける。
「……え?」
なんと目の前の谷崎さんに当たっているはずの銃弾がすり抜けていったのだ。
そして次の瞬間、谷崎さんとナオミさんが消えた。
「ボクの『細雪』は
「なっ……何処だ!」
「ボクの姿の上に背後の風景を『上書き』した。もうお前にボクは見えない」
成る程、そういうことか。
つまりここ全体が巨大なスクリーン。
「しかし……姿は見えなくとも弾は中る筈っ!」
樋口さんががむしゃらに銃を撃つ。
下手したら私たちに中りそうだ。
「大外れ」
「……ッ!?」
樋口さんの背後から谷崎さんが現れる。
そしてギリギリと樋口さんの首を絞める。
「死んで終え!」
「くっ……あ……」
あと少し、あと少しで勝てる。
そう思っていたが、次の瞬間にその希望は音をたてて崩れ落ちる。
ゴホッ
此れは明らかに人が咳き込む声。
でもここに咳き込んでいる人などいない。
そう考えていた次の瞬間……
「た、谷崎さん!」
谷崎さんが倒れており、そこに黒い『何か』が刺さっていた。
谷崎さんに刺さっている黒い巨大な手のようなものをたどる。
それと同時に聞こえてくる、銃器のように冷たい声音が聞こえてきた。
「死を惧れよ。殺しを惧れよ。死を望む者、等しく死に、望まるるが故に」
ーこいつには遭うな。遭ったら逃げろー
そこには黒い外套を纏う男の人がいた。
『黒い何か』は彼の外套に繋がっている。
瞳孔に光はなく、あの写真のままだった。
ー俺でも、奴と戦うのは御免だー
国木田さんの言葉が頭のなかを巡る。
遭ったら逃げろ、遭ったら逃げろ……それなのに、体は震えを増すばかり。
「お初にお目にかかる、僕は芥川」
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+アリス+(プロフ) - 野良神さん» 誤字の指摘ありがとうございます。すぐに直しますね。 (2018年12月24日 10時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
野良神(プロフ) - 13ページの異能力が維能力になってますよ! (2018年12月24日 9時) (レス) id: 98ee09b097 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» 判りました。こちらの不具合かもしれないので直してみます。この作品を見てくださりありがとうございます (2018年10月13日 21時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
issu(プロフ) - はい! (2018年10月12日 22時) (レス) id: 9f68ff9d03 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» イメ画は設定のところにあるもののことでしょうか? (2018年10月12日 20時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:+アリス+ x他1人 | 作成日時:2018年4月6日 17時