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三十一話「綺麗な目」 ページ32

ふと、依頼者の女性、樋口さんの方を向いた。
好奇心の所為か、樋口さんの座っている椅子の方へ歩いて行く。
じぃっと樋口さんの顔を見る。




「……何か顔についてますか?」


「……綺麗な目をしていますね」


「へ?」





思わず口から出てしまった。
でも綺麗と思ったのは本心だ。
ルビーのように赤く、キラキラした目だ。
私とは違う、兎みたいに可愛い目。







「何で急にそんなことを?」


「何でもないです。ただ、綺麗だなと思って」





ふにゃりと表情筋をゆるませる。
そんな私を、樋口さんが不思議そうに見つめる。






「Aさんも綺麗だと思いますよ。その目」


「?」


「お兄さんとよく似ていますね。
私はその目、朝焼けみたいで素敵だと思いますよ」






素敵……その言葉が頭の中をループした。
顔が少し熱い。
生まれてこのかた、自分の容姿を褒められたことはない。
変な感じだ。
……私の目は兄と同じ、紫と黄色の色をしている。
まあ、私はこの目を良く思ったことはない。
でも、この人に、樋口さんに云われて……少し自信が持てたような気がした。
言葉では上手く言い表せないけれど、すごく嬉しかった。







「A!一寸これ手伝って!」







お兄ちゃんに呼ばれた。
お兄ちゃんの所には大きな箱が二つ。
多分運ぶのを手伝ってほしいのだろう。
樋口さんに会釈をして、お兄ちゃんのところに向かった。







「A嬉しそうだね。何か良いことでもあったの?」


「……なにも」






初めてお兄ちゃん以外の人に褒められた。
そう思うと、心がふわふわして、思わず表情筋がゆるんでしまった。
少し浮かれすぎかもしれない。
初めての感覚に頭が慣れなくて、少しふわふわする。






「あれ」





もう一度樋口さんの方を見る。
でもそこには樋口さんはいなかった。
トイレに行ったのかな……?

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作品ジャンル:アニメ
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+アリス+(プロフ) - 野良神さん» 誤字の指摘ありがとうございます。すぐに直しますね。 (2018年12月24日 10時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
野良神(プロフ) - 13ページの異能力が維能力になってますよ! (2018年12月24日 9時) (レス) id: 98ee09b097 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» 判りました。こちらの不具合かもしれないので直してみます。この作品を見てくださりありがとうございます (2018年10月13日 21時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
issu(プロフ) - はい! (2018年10月12日 22時) (レス) id: 9f68ff9d03 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» イメ画は設定のところにあるもののことでしょうか? (2018年10月12日 20時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ x他1人 | 作成日時:2018年4月6日 17時

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