終章【××】 ページ33
皆が寝静まり夜も更けた頃、少女はステンドグラスの美しい通路を歩いていた。
コツン、コツン、と靴の音が木霊する。
そこにもう一つの足音__大人の足音が響いた。
少女は目を凝らして覗いてみると、一人の男性が此方に向かって歩いているのが確認できた。
「嗚呼、貴方ですか」
道化師は唇を薄く引き伸ばし笑う。
その人物に気づいたからだ。
「何の御用です?__太宰治さん」
その人物__太宰は「こんばんは」と云いながらふふっと笑う。
「今回集まった三十人に見覚えがあってねぇ。
……試しに個室にあったノートパソコンで調べてみたんだ。
そうしたら面白い事が起きた」
「どんなことです?」
「最初に君が殺した男。元犯罪組織・ミミックの生き残りだった。
だけど私はついさっきまでその男のことを思い出せなかった。
マフィアにいた頃、資料を見たにも関わらず」
ピエロはニヤリと笑った。
幼さが見えるその顔を妖しく歪めて。
「それ以外の人物も調べた。
犯罪組織、麻薬の運び屋、犯罪者と手を組んだ研究員。
でも其れを調べるまで記憶の片隅にも残っちゃいなかった」
太宰は光のない目でピエロを見つめ、微笑んだ。
「其れで気づいたんだ__記憶を消されているのはAちゃんだけじゃないって」
「ふふっ……鋭いですね」
二人は笑っていた。
でもその目に光は写っていなかった。
起爆寸前の爆弾のように、マッチを近づけられた火縄銃のように、
いつお互いの喉から血が吹き出ても可笑しくない……そんな空気が漂っていた。
「共通点は【犯罪史に名を刻む者】。
其れを気付かせない為に記憶を消した、そうだろう?」
「そうですよ、私が貴殿方の記憶を消しました。
でも共通点を気付かせない為じゃないです。
__全てはジョーカーが本性を現さない為に」
ピエロは人差し指を口許に当て、唇を薄く引き伸ばす。
其れは道化師のつける仮面のように、怪しい雰囲気を持っていた。
「ジョーカーはAちゃんの事だね。勿論彼女のことも調べた。
驚いたよ、今探偵社で扱っている事件なんだから」
ーヨコハマ連続殺人事件の犯人__地獄の悪鬼すら泣いてひれ伏す殺人鬼ー
「其れが彼女の正体だ」
静かな夜が終わろうとしている。
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+アリス+(プロフ) - 怪盗MOONさん» ふふふ、どうでしょうか……。此れからのお楽しみです。 (2019年7月21日 12時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
怪盗MOON - なるほど。道化師は異能力者で、此のデスゲーム、・・・日い、“脱落者ニハ死ヲ与ウル”は道化師の異能と云う事か・・・。(と、云うのが私の推測です。) (2019年7月20日 15時) (レス) id: b5aabf0ca5 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - あいどんとすぴーくいんぐりっしゅさん» ありがとうございます。惚れていただけるなんて光栄です。更新頑張りますので、楽しみにしていてください(*^^*) (2019年6月6日 19時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
あいどんとすぴーくいんぐりっしゅ - え……なにこれ………めっちゃ好きなんですけど!!ヤバい!この小説に惚れる!いやもう惚れてる!更新楽しみにしてます!頑張って下さい! (2019年6月6日 18時) (レス) id: 7b91c6ec22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:+アリス+ | 作成日時:2019年5月3日 17時