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三話【心中】 ページ4

しばらくの沈黙が流れ、漸く太宰が口を開いた。





「記憶喪失……と云うことかい?」


「多分……」





ゲーム開始から五分が経過。
モニターにそう記され、更に焦る。
自分の名前はなんだ。
いや、脱出を優先すべきだ。
でもどうすれば……






『あーあー、そこの迷える子羊ちゃん!
貴女は搬送中のトラブルで記憶が抜けていたようだね!
そんなわけで、ある程度の経歴を教えるよ!』







スピーカーからでる大声に肩を揺らす。
毎度毎度、この声には慣れない。






『名前はA!十八歳の名門女子高出身!誕生日は五月五日!』






結構な大声で個人情報を叫ばれるのは、気持ちとしてなんか複雑だ。
Aという少女は太宰の方を向く。






「名前も判ったことですし、早く鍵を探しま__」


「Aちゃん、嗚呼、漸く名前が判った。
よろしければ、その白く細い指で私の首を絞め殺してくれないだろうか。
__否、心中してくれないかい?」


「……」






太宰はかしずき、Aの手をとり、その細い線をなぞった。
その甘い声に囁かれた女性は、きっと恋に落ちてしまうだろう。
だがAは違う。
基本的に無表情なその顔を、心底嫌そうに歪ませて太宰を蔑んでいる。
そして冷たい声でこう云った。






「ふざけないで下さい」


「アッ、スミマセン」






Aはいたって冷静であった。
自分の記憶が無かろうと、
初対面で心中を申し込まれようと、
Aの無表情は崩れることは無かった。






「貴方が下らないことをしている間に残り時間は十五分になってしまいました」


「……」


「どうしてくれるんです?」





光を灯さない絶対零度の目。






「鍵、一緒に探してくれますよね?」


「勿論デストモ」

四話【鍵】→←二話【記憶】



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+アリス+(プロフ) - 怪盗MOONさん» ふふふ、どうでしょうか……。此れからのお楽しみです。 (2019年7月21日 12時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
怪盗MOON - なるほど。道化師は異能力者で、此のデスゲーム、・・・日い、“脱落者ニハ死ヲ与ウル”は道化師の異能と云う事か・・・。(と、云うのが私の推測です。) (2019年7月20日 15時) (レス) id: b5aabf0ca5 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - あいどんとすぴーくいんぐりっしゅさん» ありがとうございます。惚れていただけるなんて光栄です。更新頑張りますので、楽しみにしていてください(*^^*) (2019年6月6日 19時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
あいどんとすぴーくいんぐりっしゅ - え……なにこれ………めっちゃ好きなんですけど!!ヤバい!この小説に惚れる!いやもう惚れてる!更新楽しみにしてます!頑張って下さい! (2019年6月6日 18時) (レス) id: 7b91c6ec22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ | 作成日時:2019年5月3日 17時

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