【銀魂】ロマンスを騙る【短編集】

※他作者様方と“２回目のK点超え”という共通のお題で書いた文章になります。一応01-02と繋がっています。
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『……もうさ、忘れろよ』

そう頭を撫でてきたときの坂田の目は忘れられなかった。その手の温もりに少なからずわたしは縋ってしまったのだ。さぞかし優しい目をしているのかと思いきや、どこまでもいつも通り。飄々とした死んだ魚の目が、わたし越しにどこか遠くを眺めているような。その淡白さと余裕に、見当違いにもムカついた。

『……そんな簡単に忘れられない』
『こんな簡単に他の男に抱かれといてかよ』
『……』
『冗談だろ』

何も言い返せない。どう考えても間違っているのはわたしの方なのだ。そして厄介なことにいまのわたしは完全に正気である。何もかも昨夜のわたしが全部悪いと言いたいところだけど、昨夜だろうが今日だろうが、とにかく私以外私ではないのだ。


『……こんな自分が嫌い……って頭抱えそうになった自分が悲劇のヒロインぶってて嫌』
『もう手遅れだろ、お前は女からは嫌われるタイプの女。だから友達も俺しかいねーんだろ』

慰められる資格もないのかもしれない。けど、仮にも昨夜は共犯者だったのだ。なんでここまでこいつに徹底的に攻撃されなきゃならないんだろう。

『友達？わたしたちが？』
『セのつくフレンド？』
『……絶交』


□


絶交宣言をしてから２週間が経った。好きなひととも会わす顔がなければ友達はいない。たったの２週間しか孤独に耐えられなかったわたしは、マリンちゃんに会いに行くついでにセのつくフレンドの姿を探して、向こうから声を掛けてくるのを待った。

「……俺のこと待ってたのかよ」

図星だった。いつも通り茶化すような笑いまじりの言い方に含まれた、哀れむような嘲るような成分が、塞がりきっていない傷口に鈍く滲みた。

「坂田さんでわたしのことをいっぱいにして、何もかも忘れさせて……？ってか」
「……そう言ったら？だってもう軽蔑してるでしょ、いいじゃん」

ヤケクソだった。結局正気になったところで腐った根は治りそうもない。坂田は妙に静かになった。また遠くを見つめて「いーよ」とだけ言って、わたしの腕を引いた。

パチンコ屋の裏らへんには安っぽい白亜風の建物がたくさんある。微かに聞こえていたサイレンの音が近付いてくるから、思わず足が止まってしまった。


「……初犯は過失でゴリ押せんだよ。２回目は情状酌量ねぇぞ」
「……どっちにしろもう取り返しつかないもん」