【銀魂】ロマンスを騙る【短編集】

「……つかよ。もう取り返しつかないもん……とか言ってたけどさ、別にお前多串くんと付き合ってないんだから良くね？」

ろくでもないピロートークも話題が尽き、少しの沈黙に微睡みかけてきた時、坂田が何かを思い出したように言った。

「……いま言う？」
「いや、なんかずっと腑に落ちなかったんだよな。あの時のお前、完全にお前の嫌いな悲劇のヒロイン界の主演女優賞女優だったしな。おめでとう」

言われてみれば心当たりがありすぎてつらい。確かに浮気でも不倫でもないけれど、好きな男に罵詈雑言を浴びせて勝手に傷心して、それを別の男に癒やしてもらうなんて、せいぜい視聴者からは嫌われる助演女優賞止まりだ。
それに。まだ土方さんが好きなはずなのに、２回もコイツと過ちを犯してしまったという事実を今更咀嚼してしまった。きっと今度こそもう本当に取り返しつかない。

「……情状酌量もなかなかウザかったよ？絶対いま俺いいこと言ったヨッシャとか思ってたよね」
「は、はぁ〜？つかそもそもお前なんでまた海物語なんかやってたの？スロット派に転向したんじゃなかった？絶対マリンちゃんにじゃなくて俺に会いに来てただろ、健気か」

「……うるさいもう寝る」
「ンな茶番がしたかったわけじゃねえんだよ。耳かっぽじってよく聞け」

坂田に背を向けてシーツを上に引っ張り上げようとすると、その両腕が寝返りを阻止した。なにこれ床ドン？

「……なに」
「理由なんて大してないし、理由なんて大してないのに２回も間違った。」
「……」
「ただ、理由なんて今すぐに思い付かなくてもいい。肝心なのは間違え方を間違えないことだろ」

筋肉質なその腕の表面には太い血管が浮き出ていて、坂田の顔よりも話の内容よりもよっぽど目を引いた。

「いいこと言いたい気持ちは伝わってきたけど、内容がぜんぜん頭に入ってこない」
「……セからはじめるフレンドも悪くなくね？」

いざ正面を向けば、あまりの顔の近さにお互い押し黙ってしまった。そしてどちらからともなく唇を重ねた。二人を裂くように、いかにも前時代ぽい備え付けの電話が鳴った。


＜完＞
.
今回は「『初夜は想いや衝動があるけど２回目には明らかに理由がいる、それが深い』ってどこかの創作論で言ってたから書いて」という趣旨のツイートを受けた財布さんの「２回目、書いちゃおうぜ」というツイートを拝見し、書いた次第です。うわ浅！今回も楽しかったです。お付き合いくださったお二方、いつもお世話になっております、お慕いしております♡
.