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【kochanside】災難 コウチャン ページ4

キッチンに立ち、エプロンをつけて、手を洗う。




「よし、先輩のお誕生日だから頑張るぞ」




僕は気合十分。




バイトで渡すために、朝の五時からケーキ作り。




山森さんから貰ったアドバイスを書き留めたメモを開いた。




卵を手に取りボウルに割り入れていく。




「先輩、喜んでくれるかな」




彼女の喜んだ表情を思い浮かべる。




口角が自然と上がってしまう。




あっ。




手から滑り落ちた卵がボウルの中で砕け割れてしまった。




余計なこと考えたせいで。




自業自得だとここは冷静に腹を括った。




そうこうしているうちに、焼く前の生地が完成。




型に流し込み、オーブンで約三十分焼き上げる。




「残すは飾り付けのみ」




時刻は六時を回っていた。




バイトまであと二時間。




ちょっと一休み。




汚く敷かれている布団にゴロンと横たわった。




「あれ」




重たい目を擦る。




もしかして。




恐る恐る目覚まし時計を見る。




七時三十二分。




慌てて飛び起きると、オーブンの中を確認する。




幸い、綺麗に焼けていた。




うたた寝をしてしまった自分に軽くビンタをする。



 
「やっべ、デコレーション」




先に作っておいた生クリームを塗り、その生地の上にクリームを絞る。




最後に苺と、チョコプレートを乗っけた。




ラッピングをして無事完成。




急ぎすぎて少し不恰好になったが、仕方がない。




「本当はもっと美味しそうにできたはずなのにな」




はぁと大きくため息をつき、そんな場合ではないと今度は自分の身支度に入った。




走れば間に合う。




ケーキを抱え、彼女のことを考えながら晴れた道を走り抜ける。




バイトに遅れたくない気持ちと、




彼女の驚く顔を見たいという気持ちが、




僕の足をさらに加速させる。




風は心地よかった。




「よっしゃ」




何とかお店の前まで時間内に着くことができた。




そして彼女は丁度、店内へ入るところだった。




彼女目掛け、




「先輩、待ってください」




と、息を切らしながら呼び止めた。




彼女は振り返り、困ったように笑いながら僕に近寄ってきた。




『こうちゃん、朝から走って大変だね、どうせ寝坊でしょ』




違う?と首を傾げながら彼女はそう言った。




その仕草がとびきり可愛くて僕は変に身体がぽかぽかしていく。




「今日はこれを渡したくて」

.→←【yourside】虜 イザワ



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作者名:ぱる | 作成日時:2019年8月24日 1時

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