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【yourside】虜 イザワ ページ3

「今日もお疲れ様」




甘い声。




上目遣いに




とろんとした目。




重たい前髪。




全てに虜な私。




彼が帰ってこない、眠れない日は




おやすみ先生を見るのがお決まり。




これってすごいんだ。




彼が隣にいるわけじゃないのにね、




包み込まれているような気がして。




不思議だ。




どうせ彼は今




考えるだけで、涙がこぼれ落ちた。




『たっくん…』




画面に呼びかける惨めな私。




「ただいま」




ついに彼の幻聴まで聞こえるようになったのか




ベッドの上に座り、声がする方を振り向くと




にこにことしている彼が、そこいた。




私は慌てて涙を袖で拭い、携帯の電源を落とした。




『遅かったね』




私がそう問いかけると、




私のベッドに来るや否や、




「仕事が長引いてね」




肩を寄せ、私を優しく抱きしめた。




またそれか。




見覚えのある言動に、




知らない香水の匂いにめまいが襲う。




『また他の女でしょ』




彼の喉からぐっと唾を飲み込む音が鳴る。




オレンジ色の照明に染まる彼の顔を覗き込むと、




明らかに多くなった瞬き。




彼が嘘をつくときにする癖だった。




「そんな訳ないじゃん、疑ってるの」




嘘って分かってるのに、ずるい。




甘い声。




上目遣いに




とろんとした目。




重たい前髪。




胸が締め付けられて、




張り裂けそうだ。




『ううん、疑ってない』




この悪循環これで何度目?




追い詰められない自分に、




自己嫌悪になる。




唇を噛み締めていると、頬にキスを落とされた。




「愛してる」




私はその言葉にすんなりと頷いてしまう。




そこから、キスの嵐。




すればするほど、




彼が遠く離れていくような気がして。




でも、




彼の虜になってしまった以上、




この負のスパイラルを




抜け出すことはできない。




また彼を信じる日々。




歯車が狂わないように




私は彼の手に指を絡ませた。

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作者名:ぱる | 作成日時:2019年8月24日 1時

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