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第百十一話 調 ページ16

何度も攻撃した。けれど、当たらない。

 あいつ、速い。舌打ちをしたい気分だ。ここで長く時間をとられるのは嫌なんだけども。姉さんをどうにかする必要もあるし……。

「調!ここは任せて!あんたは奏さんを!」

 美佐紀さんが声を張り上げる。僕の思考でも読んだのだろうか?ともかくありがたい。早く姉さんを探そう。姉さんは明らかに正気ではなかったから。姉さんの能力はかなり強い。もし暴れでもしたら、途轍もない被害になるだろう。

「すみません、頼みます!」

 離脱して、駆ける。姉さんが歩いて行った方向へ。あのスピードのままであれば、まだ近くにいるはず……。

 どこだ、どこだ、どこにいる?!不安と緊張で、尋常じゃないくらいの汗が吹き出る。それらを紛らわせるために、下唇を強く噛み締める。強く、強く、血が出るくらいに。でも僕の鼓動は相変わらずひどいもので、血流がどくんどくんと感じられるほどなのだ。

 走っていたのは、わずか数分間だったと思う。けど、僕の中では何時間にも感じられた。その走りがやんだのは、姉さんを見つけたから。

 話し掛けようとする僕。でも、話し掛られなかった。

「……え?」

 姉さんは……霧散した。姉さんを形作っていたものが、とけて、空気中にとろけて、消えていくように。煙みたいに。

 何だ?思い当たる節はある。フォボス症候群の発病だ。発病してしまえば異形となる……けれど、まさか霧にもなるのか?

 そしてそんな思考は……またもや掻き消されるのだ。

「み、ミアさん?!」

 先ほどまで姉さんがいた場所に、美しい長髪を振り乱して倒れている女性……WPSのミアさんが、いた。胸からはひどい出血をしている。いまだにどろどろと、血が溢れている。

 殺された?でも、誰に?まさか、姉さんに?そんなわけない。姉さんはミアさんととても仲良しだったじゃないか。

 いや、分かっているよ。姉さんはおそらく、錯乱してしまったのだろう。そして、ミアさんを……。

「姉さんっ!」

 僕は駆けた。姉さんを探すために。これ以上、姉さんに殺される人間を作らないために。

第百二話 クランクハイト→←第百十話 ミア



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ミクミキ(プロフ) - 完結しました〜 (2019年9月8日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年9月8日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 終わりましたですー (2019年9月2日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しますですー (2019年9月2日 21時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 終わりました! (2019年9月1日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミクミキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年6月23日 12時

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