恐怖シンドローム３ (ページ14)

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第百九話　唄ページ14

「うん、やっぱりそうだった」

　動かなくなったバンシーを見て、満足して頷く。

　バンシーはいつも腕に黒い人形を抱きかかえていた。攻撃した時もそう。反撃できたはずなのに、していなかった。それはなぜか。人形を守るためではないだろうか？

　思いっきり放り投げた黒い人形……ひからびたミイラを思う。あのミイラが、きっと……兄だったのだろう。死んでしまった兄を、連れていたのだろう。

　バンシーの生前……フィリアさんの事を思い出す。

　三年前、フィリアさんはいなくなった。家に、血まみれのシーツやらを残してね。

　ゼロ生物の正体は、死の淵でフォボス症候群を発症あるいは悪化させた事により蘇生した人間。だからフィリアさんは、おそらくあの日殺されたんだろうな。

　けどね、残されたそれらにはおかしなところがあったの。人間が一人は死んでいるであろう血溜まり……それが二つあった。フィリアさんは一人暮らしだったのに。そこで私達はフィリアさんについて調べてみた。

　フィリアさんには、二つ年上のお兄さんがいたらしかった。でも、そのお兄さんは何年か前に死んでいる。血溜まりの一つは、多分そのお兄さんのものじゃないのかな。フィリアさんはお兄さんの亡骸を大切に隠していたのだと思う。ゼロ生物となってしまっても、ミイラになったその人を連れ歩いて守るほどには。

　まさか気を失うほどとは思わなかったけど……そう思いながらバンシーに近寄る。そいつを持ち上げて、コンテナに運び入れた。お兄さんは後で回収しなくちゃ。