不気味 ページ39
「……ふわぁ」
最近、部屋にこもりっきりだったの。なぜなのか分からないんだけど、何だか施設の空気がおかしくて、気味が悪くて。
周りの人が熱狂してるのに、自分だけ喋らず静かに突っ立ってる時みたいな、居心地の悪さがあったの。あたしとカチュアは、それが嫌だった。
けど、外に出ないのも限界があった。狭苦しい室内にずっといると、気が触れそうだったからだ。かといって、一人で外に出るのも不安で、だからあたしはカチュアと手を繋いで、廊下を散歩してた。
「……これ、何なんだろうね」
「さあ?でも、気持ち悪いわ」
廊下の壁に飾られているのは、絵。それも一枚や二枚ではない。長い長い廊下の壁一面に、絵がびっしりと、隙間なく貼られている。百枚なのか千枚なのか分からない。
描かれているのはどれも同じ。赤い髪の毛をした、人間みたいな生き物。絵の具や色鉛筆、クレヨンなど、様々な道具で描かれているそれらは、なんとも不気味だった。でも、それ以上に不気味だったのは……
「美しいなぁ、ああ、なんて美しい……」
「女神様……我々に、どうか救いを……」
あたし達上級職員は、職員として働く事を許された幻想体だ。だから、いちおうあたし達に作業を行う職員さんもいる。
その職員さん達が、ああして絵を崇めているの。目は爛々と光ってて、気持ち悪い。なるべくそっちを見ないようにしながら、食堂へ向かう。
「あら、ご機嫌よう」
「こんにちは」
「……こんにちは、吸血鬼さん、人狼さん」
食堂では、二人がご飯を食べていた。心なしか、顔色が悪い。
「ねえ魔法少女、あれって何なんですの?私、不気味で仕方ありませんの。何かご存知でしたら、教えていただけなくって?」
しかもこっちの彼、あいつらに布教されてるみたいなんですの。いなしてはいるけどとてもしつこくて、本当に辛いみたい。
吸血鬼さんはそう言って、困ったような顔をした。
あたしだって教えたいけど、知らない。むしろ、こっちが聞きたいくらい。
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