ガス ページ33
「……どうしようか、カチュア。あたし、どうしたら良い？」
朝食を食べても、あたしの興奮は収まらなかった。むしろ、空腹を満たした分だけより激しくなったような。あたしは歯を噛んだ。指を噛んだ。血がにじむのも構わずに。
「あたしあの人に会わなくちゃ。あの人をもう一度見たいの。カチュアだってそうでしょう？！会いたいの！会いたい会いたい会いたい！」
「落ち着いてよ華璃ちゃん！情報が必要だわ。社員証からデータベースにアクセスして、あの人のデータを探し出さなきゃ」
ナンバーは確か622よね。カチュアはそう呟いて、社員証をポケットから取り出した。電源をオンにして、社内のネットワークにアクセスしようとしているようだ。しかし、提示されるのはなぜか、『インターネットに接続されていません』の文字。
なんてタイミングが悪いんだろう！思わず叫びたくなったが、ぐっと堪える。データ管理室に向かうしかない。流石にあっちなら繋がるはずだ。カチュアも同じ事を考えたらしい。目配せして、出口の自動ドアを開けようとする。
しかし、こちらも開かない。あれ？と、不審に思う。野々華さんに連絡していないからか？でも、連絡せずに遊びに出かける事とかたくさんあったし……セキュリティ強化月間とか、そういう何かがあったの？それとも、あたし達があんまりに無断外出するから、その罰としてこうしているのかもしれない。けれど、あたし達はデータ管理室に急がなきゃいけないのだ。
「もしもし、もしもし！野々華さん、聞こえます？！扉を開けてください！あたし達、データ管理室に行きたくて……」
了承してもらえると思ってた。だって、外出申請なんて、ほんとに形だけのものだったから。いつもなら、野々華さんは良いですよって言ってくれていた。
「ごめんなさい。それはできません」
けれど、聞こえてきたのは拒否の言葉。想定外すぎて、あたしは一瞬言葉に詰まる。次の句を紡ごうとするけど、それもできなかった。
急に頭がぐらぐらとしてきたのだ。なぜ？耳を澄ませると、かすかにしゅー……と音がしていた。いつからだ？興奮しすぎてて、分からなかったのだろうか？身体がどんどん重たくなっていく。
眠ってはいけない。何をされるか分からない。
必死に意識を保とうとしたけれど、でもあたしには何もできなかった。
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