始まり ページ30
「……ちゃん!華璃ちゃんって!起きてってば!大変なの!」
寝入っていたら、カチュアに叩き起こされた。どうしたんだろう?大きくあくびをする。昨日、遅くまでゲームしてたから眠いのだ。ずきずきと痛むこめかみをおさえながら、重いまぶたをこじ開ける。
カチュアの顔が目にはいった。ひどく慌てている様子だ。どうしたんだろうか?何か不備でもあったのか?
「聞いて!さっきひどい地震が起きたの!それで幻想体が何匹か脱走したみたいで、さっき私達が呼び出されたのよ!」
ああ、なんだ、それだけなのか。幻想体なんて職員さんがどうにかしてくれる。あたしはさっさと二度寝しようと目を閉ざそうとして。
……幻想体?
「脱走したの?!」
「だからそう言ってるじゃない!ともかく早く変身して行きましょ!」
言われるがままに魔力を身に纏わせて変身する。カチュアに手を引かれ、部屋を出る。
あたし達と同じく出動命令が出たのだろう、何人かの人達が廊下を走っていく。上級職員がこれだけ呼び出されるなんて、よほどの量の幻想体が脱走したのか、それとも。
「脱走、暴走している幻想体はたくさんいるわ。私達が制圧しなくちゃいけないのはA-622-Rよ。詳しい情報は貰ってないけど、洗脳型みたい」
「洗脳かぁ……被害は?」
「かなり出てるらしいわ。そもそも元の図体がものすごく大きいらしいの」
あの地震も多分、622が暴れているから発生していたんだわ。カチュアがそう言うのとほぼ同時に、床がぐらぐら揺れる。
「そんだけ大きいのに、あたし達だけで制圧できるの?」
「分からない。でも、やるしかないでしょ。何もしなかったらそれこそ殺されるわ」
それもそうだ。
また地震が起こる。相当暴れているようだ。もしかすると、誰か攻撃を仕掛け始めたのかも?
「622は今、622特殊収容室付近にいるみたい。転送装置は私が起動させるから、社員証貸して、先に乗ってて!」
「分かった!」
カチュアに社員証を投げて、あたしは転送装置に乗り込む。小さなモーター音と共に、あたしは光に包まれた。
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