【派生作品】貪欲の王 (ページ6)

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その絵画は、どこかの貴族が息子を描かせたものなんですって。豊かな黒髪に大きな瞳の、愛くるしい男の子。私はその子を見て、はぁと溜息を漏らす。

　なんて素敵な絵画。生き生きとした男の子は、背後にいる母親のドレスの裾をぎゅっと握っている。その表情はきりっとしていて、よほど緊張しているみたい。

　母親の顔は見ない。というより、見えない。なぜなら、私が下僕に命令させて塗り潰させたから。でも、見る必要なんてない。そうでしょ？私が見たいのは私の顔じゃなくて、可愛い可愛い坊やの顔よ。

　あの時の坊やはとっても可愛かったわ。それこそ、世界の何よりも！私にとっての一番で、私はあの子を誰よりも、何よりも愛していた！

　でも、あの子はもういない。

　あの子を描いた絵画はこれしかない。ああなると分かっていたら、もっとたくさん描かせていたっていうのに！悔しくて、悲しくて、強く唇を噛み締める。涙がじわりと滲むようだった。口の中に鉄が広がる。あら、噛み締めすぎたわ。それを飲み込む。美味しい。

　改めて絵画を見る。私によく似た、とっても可愛い子。でも、目元には夫がいる。優しくて、聡明な人だった。

　今でも思い出せる。私は彼らが大好きだった。だって家族だったんだもの。なのに、なのに、いなくなって。なくなって。消え去った。

　どうしてそうなったかなんて言いたくもない。

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