4 ページ4
今日はちょっと機嫌が悪いの。なぜかって?
欲しい物が少なくなってきたのよ!美味しい食べ物はたんと食べて満腹になっちゃったし、お洋服は世界中のデザインのものを手に入れたし、宝石だって、部屋いっぱいに積み重なって、部屋から溢れ出る始末。
ああ、嫌だわ。欲しい物があれば、私はそれを探し求めて手に入れる事ができたというのに。
欲しい物がなくなってしまったら、私はどうすれば良いの?欲しい物だけを見なければならなかったっていうのに、見たくない物を見ずにすんでいたというのに。
でも何かしら、見たくない物なんて。あまりにおぞましくて、あまりに悲しくて、だからこそ忘れようとしていた物だという事は覚えていたけど。だからといって思い出そうとはしない。それは忘れているべきものよ。
下僕に命令して、薬を持って来させる。ヴァーティルちゃんの作る薬はよく効くのよ。透明な薬液の入った注射器の針を静脈に刺す。少しずつ、少しずつ、薬液を注入していくの。
すべての薬液を注射した頃に、効果は現れる。目の前がぽわぽわしてきて、身体がふわりと浮き上がるような浮遊感がきた。感覚が鋭利になったせいで、明かりが眩しく思えて、思わず目を細める。やや頼りない足取りでベッドに歩み寄り、ゆっくりと横になった。
次に感じたのは幸福感。自分が石になったように、沈み込んでいくような感覚があった。海の中を漂っているような感じ。眠りにつく時のような、優しいけだるさに近い。けど、眠いわけじゃないから、それをずっと味わう事ができる。
イケないお薬。私はそれを、よくヴァーティルちゃんに注文していた。たまにあんな風に取り乱すから、それをどうにかするために。
しばらくそうしていると、気分が良くなった。爽やかな笑顔で飛び起きて、私は開口一番にこう言うの。
絵画が欲しいわ。世界で一番美しい絵画が欲しい!
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ