検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:2,038 hit

4 ページ4

今日はちょっと機嫌が悪いの。なぜかって?

 欲しい物が少なくなってきたのよ!美味しい食べ物はたんと食べて満腹になっちゃったし、お洋服は世界中のデザインのものを手に入れたし、宝石だって、部屋いっぱいに積み重なって、部屋から溢れ出る始末。

 ああ、嫌だわ。欲しい物があれば、私はそれを探し求めて手に入れる事ができたというのに。

 欲しい物がなくなってしまったら、私はどうすれば良いの?欲しい物だけを見なければならなかったっていうのに、見たくない物を見ずにすんでいたというのに。

 でも何かしら、見たくない物なんて。あまりにおぞましくて、あまりに悲しくて、だからこそ忘れようとしていた物だという事は覚えていたけど。だからといって思い出そうとはしない。それは忘れているべきものよ。

 下僕に命令して、薬を持って来させる。ヴァーティルちゃんの作る薬はよく効くのよ。透明な薬液の入った注射器の針を静脈に刺す。少しずつ、少しずつ、薬液を注入していくの。

 すべての薬液を注射した頃に、効果は現れる。目の前がぽわぽわしてきて、身体がふわりと浮き上がるような浮遊感がきた。感覚が鋭利になったせいで、明かりが眩しく思えて、思わず目を細める。やや頼りない足取りでベッドに歩み寄り、ゆっくりと横になった。

 次に感じたのは幸福感。自分が石になったように、沈み込んでいくような感覚があった。海の中を漂っているような感じ。眠りにつく時のような、優しいけだるさに近い。けど、眠いわけじゃないから、それをずっと味わう事ができる。

 イケないお薬。私はそれを、よくヴァーティルちゃんに注文していた。たまにあんな風に取り乱すから、それをどうにかするために。

 しばらくそうしていると、気分が良くなった。爽やかな笑顔で飛び起きて、私は開口一番にこう言うの。

 絵画が欲しいわ。世界で一番美しい絵画が欲しい!

5→←3



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (9 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3人がお気に入り
設定タグ:ようこそ異世界へ! , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ミクミキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年1月31日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。