人工物、あるいは人ならざる者 (ページ26)

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外伝12 ページ26

ジェベリアは夢を見ていた。それはかつての夢だった。見も知らぬ男達に暴行を加えられ、ただひたすらに怯えていた幼い頃の夢である。

　小さな悲鳴と共にジェベリアは目を覚ます。汗が頬を伝う。呼吸を整えて自身の頬に触れた。そこには冷たく固いプラスチックではない、肉特有の柔らかさがあった。

　だが、ジェベリアは震えた。怖かったのだ。思い出すだけで震えが止まらなかった。ジェベリアは隣で眠るジョンの胸に顔をうずめた。落ち着く匂いがする。大きく息を吸い込んで、吐き出す。

「ダーリン、起きてる？」

　小さな声で囁きかけるが、返事はない。眠っていると判断したジェベリアは、ジョンの首筋に軽く吸い付いた。血を吸っているというわけではない。不安を紛らわせるために、ジョンの身体に悪戯をしているだけである。

　身体をすりつけ、呻き声をあげる。だんだんとその呻きは情欲を含んだものになっていくが、ジェベリアの胸を締め付ける苦しみは消えない。

「……どうしたのかな」

「あ」

　いつからだろうか。ジョンが目を覚まして、ジェベリアを見ていた。ジェベリアはしまった、と後悔する。

「明日も早いよ。寝ないの？」

「寝るわよ。起こして悪かったわね」

　ジェベリアはつっけんどんに言い、ジョンに顔を見られないよう顔をそむける。ふぅんと彼は相づちを打って、それから黙った。こんな涙でぐちゃぐちゃの顔を見られなくて良かった、とジェベリアは安堵する。

「あ、そうだ」

「何？」

「何かあったら言うんだよ。キミはオレの可愛い奥さんなんだから」

　ジェベリアは答えを返さない。代わりにジョンをきつく抱き締めた。