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第八十九話 フラム ページ46

フラムがはっきりと意識を取り戻したのはすべてが終わった後だった。
秘密結社による中央区の制圧。ブラウは中央区の管理AIを破壊すればすべてが終わる、それさえすれば全てがよくなると信じていた。それが、この結末だ。

「ごめんなさい、フラム。ごめんなさい、ドロシアさん……」

ドロシアの、文字通り自らのすべてを使った延命治療により五体満足で生還することのできたフラムであったが、その傷跡は生々しく彼の肌に刻み込まれていた。

「ごめん、フラム。僕のせいであんなことに……」

「いつまで気にしてるノ?ドロシアさんはああやって死ぬために生まれた、そしてそれを受け入れてタ。これで良かったんだヨ」

未来都市で目覚める前と何ら変わらない笑顔のフラムに、ブラウは叩きつけるように言った。

「よくないよ!あの時は止められなかったけど、僕たちは、ドロシアさんがあんな風に死ぬ必要のない世界のために戦ってたんだよ!?それなのに!」

「……そうだネ」

あの時自分に倒れてきたメモリー。あれはブラウが周囲を鑑みずただ破壊しようとしたがために、自分が怪我をする羽目になったんだ。フラムはそう言おうとしてやめた。

「……ドロシアさんが生きてて、ここが平和な世界になったとしたら、兄さんはドロシアさんとなにをしたかったノ?」

「何って……僕は、ただ二人が幸せならそれで……」

「平和って、なんだろうネ」

「そんなこと聞かれても、今更どうにもできないよ」

しばらく二人が黙り込んでいると、病室に秘密結社のコンラッドが顔を出した。

「調子はどうだい、ブラウ。ドロシアが死んでしまったのは悲しいことだけれど、地下世界のためにすべきことはまだ沢山あるんだ。前を向いて、一緒に歩いて行こう」

「……はい」

ブラウは差し伸べられた手を取り、ゆっくりとフラムのそばから離れていった。

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ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しましーた (2019年12月16日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しまっす (2019年12月16日 21時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月10日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミクミキ x他2人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年11月13日 19時

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