ページ ページ39
背はすらりと高く、手足も細長いが適度に肉が付いており、出るところは出て引っ込むべきところは引っ込んだダンサーかモデルにでもなれそうな整った容姿だが、いかんせん無愛想な上に顰めっ面なためその魅力は半減している。忙しさからあまり化粧などに時間を割かない彼女だが、最低限口紅ぐらいはとピンクレッドのものが控えめに塗られていて、白や青、緑で統一された顔のなかで、きゅっと引き結ばれたその唇だけが異彩を放っていた。
反対側のソファに座る男性は足を組み、ソーサーを左手で、カップを右手で持ち優雅に紅茶を飲んでいる。ラピスラズリのようなやや紫がかった青い瞳に、こざっぱりとした髪型の金を帯びた柔らかな明るい茶髪。やや青白い肌は人形のようで、厚みの薄い唇は三日月型の緩やかな弧を描いている。糊の効いた白いシャツの襟元が眩しいぴっしりとしたスリーピースにどこか誇らしげなシルクハット。そして、洒落た怪盗のようなモノクルという典型的な紳士スタイルだが、浮かべている輝かんばかりの笑顔はまさに「おとぎ話の王子さま」のようで、なんとも嘘臭く作り物染みている。
テーブルにはダイスとトランプの束が我が物顔で鎮座しており、一面ダークブラウンのなかで悪目立ちをしているそれらの様子はどこか喧嘩を売っているかのよう。二人の飲んでいるベルガモットティーからふわりと香るオレンジの様な香りにはリフレッシュ効果があり、不眠症や神経疲労、鬱病や不安感を取り除いてくれるというが女性にはその効能があまり発揮されていないようであった。
「………それで、貴方は一体何をご所望なのかしら。貴方自身の口から、聞かせてくださいませんこと?」
話を切り出したのは女性______西区統治者ルース・ロチェスター・ロークであった。彼女の言葉に男性______ゼーゲン・フォン・ヴィントシュティレは、にっと笑みを深め口を開いた。
「端的に申し上げるとするなら、同盟……あるいは停戦協定を結んで頂きたいのです。書面は私のほうで用意しております。」
ゼーゲンは用意していた書類をルースに差し出す。受け取った彼女の表情は相変わらず固く渋い。瞳からも疑惑や懐疑心といった感情が覗いている。ルースがすっと右手を小さく掲げると、ゼーゲンの背後の木製の扉から一人のメイドが部屋へと入って来た。金属製のトレーを手にしており、その上には取り皿にナイフとフォークとスプーン、そしてアフタヌーンティー用の二段のケーキスタンドが載せられている。
9人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しましーた (2019年12月16日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しまっす (2019年12月16日 21時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月10日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ