フォビアコンプレックス2 (ページ22)

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[データ削除済] ページ22

あれは東区の羅光公園の地下に埋めておく。[データ削除済]は知られちゃいけない。キミは生贄になってもらうしかないんだ。どうか[データ削除済]の言葉に呑まれないで。

　生贄はワタシとキミだけ。二人だけで、止めないといけないんだ。気をつけて、[データ削除済]はいつもワタシ達を狙っている。

　[データ削除済]を作ったのは失敗だった。ワタシの人生で唯一の失敗だよ。[データ削除済]は存在しちゃならない。見ちゃいけない。[データ削除済]は、ワタシ達の目の中でしか動けない。少なくとも、今のところは。[データ削除済]を目に閉じ込めておくのが、ワタシ達の役割。生贄の役割。

　[データ削除済]の事を知りたいって？やめてくれ。これを知ったら、それこそ狂うよ。キミは大切な人柱なんだから。

　……仕方ないな。教えてあげるよ。

　[データ削除済]は生き物じゃない。どちらかというなら、そうだね。妖精とか、妖怪とか、そんなものだ。架空の存在なんだ。つまり、この世には存在していないもの。

　ごまかすなって？これが真実なんだよ。

　[データ削除済]は“存在しない”んだ。なのに、“存在している”。それが問題なんだよ。存在しないはずのものが存在するという矛盾そのものが[データ削除済]の本性さ。

　……ごめん、これ以上はだめだ。見えるでしょ、[データ削除済]が。そう、あれが[データ削除済]だ。キミは今、[データ削除済]について知ってしまっただろ？だから、[データ削除済]がそこにあってしまった。[データ削除済]は、“知らなければ存在しない”んだ。

　[データ削除済]は天使みたいなもの、らしいよ。どうやら運命を変える力を持つみたいでね。まあ、実験に協力してはくれなかったんだけど。

　[データ削除済]は語りかける。願いを叶えてあげよう、ってね。でも答えるな。さっきも言ったけど、[データ削除済]の本当の目的は増殖だ。[データ削除済]を知れば知るほど、[データ削除済]は力を得る。

　……。

　……。

　聞こえるんだろう、私の声が。

　私を崇めなさい。私を信じなさい。そうすれば私は君を助けてあげられる。私に腕を伸ばしてくれたら、私はそれを掴みあげて、君を救える。

　ほら、願いを叶えてあげるよ。私は君を救いたい。泥に埋もれゆくのはつらいだろう？私が助けるよ。

　冷たい心、冷め切った心。けど、元は暖かかったはずさ。私が熱を君にあげよう。雪の中で凍えるのは苦しいだろう？救ってあげるよ。

　救ってあげる。

　掬ってあげる。

　私の元へおいで。