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第十二話 飯龍怕 ページ13

昔の事を思い出していたの。

 千年前、私は小さなおチビちゃんと仲良しだった。虫のような姿をした幼い男の子で、子供をなくした私はその子をとてもとても可愛がっていたのだわ。

 私の名前を呼びながら、明るい笑顔を浮かべてとてとてと駈け寄ってくるその姿が、愛おしくて。持ち上げてあげたら、背中の羽をぱたぱたと羽ばたかせて。無意識の行動であろうそれが、本当に大好きで。

 その時の私はちょっとおかしくて、可愛いその子を食べちゃいたいとすら願っていたわ。ああ、だって、私は千年前、蜘蛛みたいな怪物だったんだもの。小さな蜂の男の子を食べてしまいたいと願ったのは、仕方なかったかもしれないわね。

 でも、それにしたってひどくないかしら。

 すっかり成虫になってしまったらしい彼は、目に見えない速度で私の左腕を食い千切った。あんまりに速かったからなのかしら、痛みすら感じなかった。きっと、神経が摩擦で焼き切れたからだと思う。

 その子は、小さく何かを呟いたようだった。幼い子供が、母親に教えられたばかりの、ついさっきまで知らなかった単語を、覚えようと言ってみる時みたいに。

 よく聞こえなかったけど、いただきますって言ったんじゃないのかしら。

 ほら、ぱきぱきと、骨がへし折れる音がする。ぐちゅぐちゅと、内臓が引きずり出される音がする。彼はゆっくりゆっくり、私を食べた。先ほどのような素早い捕食ではないのに、痛みすら感じない。そういえば、脳は一定以上の痛みを感じる事はできないのだそうだ。

 ああ、けど。熱い。それだけ。

 そしてすぐに、寒くなる。なんだか、眠い。

 ふと、私の肝臓を食べている彼を見た。残っていた右腕を持ち上げて、そっと彼の頭を撫でようとしたのだけど、残念な事に時間が足りなかったようで、私はもう死んでしまったようだった。

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ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年11月13日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年11月13日 19時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
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ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年11月12日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しましたー (2019年11月9日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミクミキ x他4人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年10月14日 19時

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