フォボス症候群 (ページ22)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:9,041 hit

第二十一話ナギページ22

眠りはどうやら浅かったようだ。

少しずつ意識が覚醒していく、人工的な明かりが眩しくてどうにも目を開けられない。
とりあえず、ヴェロニカがどこにいるのかが分からない。これでも五感は敏感なのだが、物音がしない。という事は研究員に連れていかれたのか…

お茶会の片付けは？

片付けの件で心配になり、意地で意識を完全に覚醒させる。
皿やカップは全て無い。

…ヴェロニカにしては上出来だ、あるいは研究員の人達がやってくれたのか………研究員さんかな。

今までずっと不思議だったのだがヴェロニカは何故あそこまで薬が好きなのだろう？過去になにかあったのだろうか、無性に気になってくる。
ヴェロニカが帰ってきたら聞こう。嗚呼でも帰った時には疲れてるから休ませてあげないと…

____ギィ

誰かが扉を開けた、みたいだ。ヴェロニカが帰ってきたのかも知れない

「ヴェロニカ！大丈夫だっ………た？」

「カ、カラス？！」

扉の近くにいたのは、ヴェロニカではなく。
フェシリアと、それを抱きかかえた上級幹部のミドリさんだ。

「フェシリア、とミドリさん…上級幹部だった気がするんですけど…」

まだ完全なカラスになる前、一回会ったことがある、少し話しただけだが、彼は研究に興味はなかった気がする…

「え？あぁ、地下で被験体を見つけてな、ちょっと応急処置して収容所に戻しに来たんよ。
というか、個々にいるって事は君も被検体？」

「そうですネ」

やっぱり見た目が違うし覚えてなかった、分かっても凄いけどネ。

「ホンマにカラスやわ…って事は末期段階やんな？」

いつのまにか羽とかをもふもふ触っていたミドリさんは興味津々だった。
上級幹部なのに被験体と話していいのかネ？
とりあえず頷いておいた。

「じゃあ名前はなんて「ミドリ様、お下がり下さい！」えぇ？」

名前を聞こうとしたミドリさんは研究員に止められた。
やっぱり話ちゃいけなかったんだネ。研究員さんが慌ててミドリさんを止めに来た。
そして研究員さんとミドリさんが話した後、ミドリさんはちょっと名残惜しそうにどこかへ行ってしまった。フェシリアは横になっている、ちゃんと応急処置はしてあるし、嗚呼

「腕か…」

腕がない…フェシリアなら再生できる、といっても矢張りグロテスクだ普通の人間が見たらかるく
失神するんじゃないかナ…でも個々の人間は普通じゃないからネ。

この研究が終わったら月の希望さんに頼んで人間に戻してもらえないかナ。