89話 ページ41
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僕は先程の彼女の様子を見て、声をかけようと読影室へと向かう。
灯りの灯っていない部屋の中には、デスクへ伏せる彼女の姿があった。
五十嵐｢...伊東さん。｣
そう呼びかけると、伊東さんはゆっくりと顔を上げて微笑んだ。
僕はそんな彼女の表情を見て目を細める。
微笑みという仮面の下に隠された表情を読み取ることは、今の僕でも容易なことだった。
A｢...あの時、"伊東"に....."悲劇の秀才"に戻れば、沙里ちゃんの身体に傷を残さずに助けられたのに...｣
五十嵐｢...！｣
彼女は瞼を落とし、立ち上がる。
A｢...どんな治療をするかで患者の人生が一変してしまう。...わかっていたハズなのに、私は言えませんでした。｣
｢何ででしょうね｣という彼女の声が暗い室内へ消えていった次の瞬間、僕は目を見開いた。
A｢...どうして、教授は私に"安藤"をくれたんですかね...｣
悲愴な笑みのまま、彼女はそう零したのだ。
僕は思わず｢え...｣と声を漏らしてしまう。
A｢...！！...いえ、何でもありません...！.....ちょっとコーヒー買ってきますね。｣
そう言って彼女は軽く僕に会釈をした後、読影室から去って行った。
ひとり残された僕は小さく呟く。
五十嵐｢.....ピレス教授が..."安藤"をくれた...？｣
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僕はその後院長に呼ばれ、院長室へと足を運ぶ。
そこで待ってくれていた大森院長はいつものように柔らかな表情でお茶...のようなモノを出してくれた。
大森｢はい、どうぞ。｣
院長はコバルトブルーの液体を僕の前へ差し出す。
大森｢...随分浮かない顔をしてるじゃない。何かあったの？｣
僕はコバルトブルーの液体に映る青い自身を見つめ、応える。
五十嵐｢.....彼女になんて声をかければいいかわかりませんでした。｣
院長はコップにお茶を注ぎながら呟く。
大森｢難しい問題よね。"安藤"だからこそ救えない...そしてそれが彼女を苦しめてる。
彼女が"伊東"であることを隠させて欲しいって言ってたからその条件を飲んだけど...｣
コトリ、と音を立ててティーポットを机に置き、続ける。
大森｢...今考えてみると、彼女自身もどうして隠す必要があるのかわかっていなかったように見えたわ。｣
五十嵐｢.....え...？｣
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奏奏奏(プロフ) - リディア94さん» ありがとうございます…！大変遅れまして申し訳ありません！続編を作成致しました！ (2019年7月16日 22時) (
レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
リディア94(プロフ) - すごくいいところで話が終わってる…ものすっごく素敵で面白い話なので、続き早くみたいです！！！更新待ってます！ (2019年7月16日 15時) (レス) id: 4cfe601cb3 (このIDを非表示/違反報告)
奏奏奏(プロフ) - あいちゃむさん» ありがとうございます！毎日少しずつではありますが頑張っていきたいと思います´`* (2019年6月29日 12時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
あいちゃむ(プロフ) - 毎回、更新楽しみにしてます！継続は大変だと思いますが、無理をなさらず可能な範囲で。。 (2019年6月29日 1時) (レス) id: a51c69fc03 (このIDを非表示/違反報告)
奏奏奏(プロフ) - 茉莉花さん» コメントありがとうございます！とても励みになります…*_ _) (2019年6月13日 22時) (レス) id: 3daaf042e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奏奏奏 | 作成日時：2019年6月13日 20時
