壊れても (ページ9)

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高橋side

おはよーございます、と入った楽屋にはまだ誰も居なかった。

みんなまだか、と椅子に座ったときドアがまた開く。

道枝「おはようございまーす。あれ？まだ恭平だけ？」

高橋「おん、俺も今来たばっか。」

道枝「そか。流星くんの一個前の仕事押しとるらしいしな。マネージャーさんが言っとった。」

じゃあ始まるの遅くなるかもな、と呟くと、

準備する時起こして、とみっちーは寝始める。

静かな時間に身を任せているとドアが開いた。

長尾「おはよーございます、、」

俺自身も少しうとうとしていたが、好きな人の声に一気に目が冴える。

高橋「おはよ。」

いつもよりも元気がない挨拶が気になったが、

表情はいつもどおりの謙杜だった。

疲れとるんかな、とあまり気にすることなくスマホを取り出す。

謙杜は俺のすぐ隣に座ってくっついてくる。

どした？と聞けば、体調が優れないらしい。

高橋「風邪でも引いたん？低気圧とか？」

長尾「ううん、、、抑制剤の副作用。なんか今日はひどい。」

そか、と静かに相槌を打つ。

彼がSwitchであることはグループを組んだ時に聞いた。

ランクが高くないから、他人にダイナミクスを変えさせられてしまうことも。

丈くんがSubで、大橋くんがDomであることも。

他の俺らはNormalだから分かることは少ない。

でもなるべく気遣おうという話をしたのを覚えている。

肩使ってええで、と余裕ぶって謙杜に言う。

心臓はバックバクな癖に。

しばしば抑制剤の副作用で体調が万全でない謙杜を見ていると、

自分の無力さを痛感する。

俺がダイナミクスを持っていれば、

DomでもSubでもどちらでもいい。

ランクなんてなんでもいい。

それさえあれば彼をなんとかできるのに。

俺には体調が悪い時に肩を貸したり、

部屋を多少過ごしやすくすることしかできない。

抑制剤を断たせる事はできない。

そんな俺が気安く触れていいと思えなくて、

謙杜の頭を撫でることは躊躇してしまった。