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藤原side
もう長い間開けていなかった引き出しをガッ、と引く。
いくつかケースが残っていてほっとした。
コップに水を汲んで、一粒手に取り体に流し込む。
Sub用の抑制剤。もう使うことはないと思っていたのだが。
大橋はあれからGlareを出してくれなくなった。
Goodと褒めるだけ。
出してや、と言おうとも思ったが、多分彼も傷ついているのだ。
彼もビビっているし、俺もビビっているから。
ランクの差をありありと感じさせられるかもしれないのが怖い。
本当に大橋のGlareで満足できなくなっていたら、と考えてしまう。
ふと気づいたときに、プロデューサーさんのことを思い出してしまう自分が怖くて気持ち悪い。
自分の中の本能が動物の形をとって俺の中で蠢いている。
あぁ!と意味もなく声を出すと、
彼が仕事に出かけてしまって、がらんとしている部屋に大声が反響した。
こんなことで気が晴れる訳もないのに。
しとしととしつこい秋雨が降り続いて窓に打ち付ける。
じんわりと締め付けるような頭の痛み、
重力が強くなったかのような倦怠感、
動かしにくい首の違和感。
今日は調子が悪い。
明日は新曲のダンスレッスンだと聞いている。
きっとハードだろうから体力は今のうちから温存しておきたい。
側頭部をもみほぐしながら寝室へと入った。
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作者名:哀川樹 | 作成日時:2022年9月30日 22時