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高橋side
無我夢中、としか言いようがなかった。
マネージャーさんが今日は居なくて、
電車で帰ろ、と思い駅に向かった。
路地裏やら道の端っこやらで、
恐らく強制的であろうPlayが行われているというのは珍しいことではない。
…そしてそれを見てみぬふりする人々も。
罪悪感がないわけではないのだが、
Normalであっても強いDomを前にしてしまえばどうにもできない。
しょうがない、そんな最悪な暗黙の了解で、
最悪な世界が構成されている。
ペタッと座り込むSubと足を突き出すDomが視界の端に入ったときもそう思った。
ただ一つ違うのは、座り込んでいるのは俺の好きな人だった。
カッとなり俺らしくもなくDomの男に掴みかかる。
いつの間にか来ていた警察には、
Domの方に無礼なことをするな、とお叱りを受けた。
急いで駆け寄るが、苦しんでいる謙杜に何もできない無力感で壊れてしまいそうだ。
タクシーの中でも家に連れてきてからも、
呂律の回っていない口調で俺のことを呼んでくれる。
たかぁしくん、たすけて。と。
大丈夫や、という声かけが届いている手応えは一切なかった。
でも他にどうすることもできなかった。
GlareもCommandも出せない俺は、
馬鹿みたいに声をかけ続けることしかできない。
長尾「たかぁしくん、オレ、たかぁしくんのことが好きなんよ！
オレに命令して！！おねがい！」
あぁ。こんな形の両思いは嫌だった。
こんな境遇でなかったら彼を心置きなく愛せるのだろうか。
自分がNormalとして生まれてしまったことを心から悔やむ。
Domだったら謙杜をSubDropから救ってあげられる。
Subだったら謙杜の支配欲を満たしてあげられる。
無力な自分に涙が溢れた。
高橋「謙杜、、ごめん、、俺、。。俺が、、ほんまにごめんなぁ。
……俺も謙杜のこと好きやで。でも、俺じゃ幸せに出来んなぁ。」
ごめん、ごめん、と壊れたロボットのように繰り返すことしかできない。
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作者名：哀川樹 | 作成日時：2022年9月30日 22時
