世界で一番大切にします【JN】 (ページ15)

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職場はとても活気があった。

化粧品を扱う会社なので女性社員がたくさん。
日本韓国どちらにも店舗を展開していて、今度リニューアルされた商品の販売促進の部署に異動になった。

スキンケアラインからメイクアップ商品まで、デザインも成分も大幅に変更があったために宣伝も大掛かりなものにしようという事だった。

やる事は山のようにある。

新しいポスターのレイアウト選考、イメージモデルの選考、CMスポンサー獲得…その他細かい事も沢山。

ユリ「これとこれ、予算の比較しておいて。あとカラーデザイナーと来週打ち合わせするから会議室押さえておいてもらえる？」

『はい、わかりました。』

ユリ「あと試し刷りのポスターのデータ、後でUSBに入れておくから人数分印刷して。」

『はい！わかりました！』

ユリ「………それから全員にコーヒー入れて、私にサンドイッチ買ってきて。」

『はい！！』

ユリ「それが終わったら社長のカツラ取ってきて。」

『はい！！！』

ユリ「わかったら復唱してメモしておいて、忘れないように。」

『はい！…ええと、予算の比較、会議室のアポ、ポスター印刷、コーヒー、サンドイッチ、社長のカツ…ラ…？』

ユリ「…ふっ、あはは！」

『…え、あの…。』

ユリ「今日から来た新人さん？一生懸命なのは良いけど少し頑張りすぎじゃない？話、ちゃんと聞いてるみたいだけど記憶力が良いだけではダメよ？」

『はい…。』

ユリ「言葉は耳に入れて、頭に入れて、胸に入れなさい。そして、処理できたら次、ね？」

隣のデスクの先輩、ユリさんはそう言ってぺし！とおでこに手を当てた。

ユリさんが手を離すところんと転がるキャンディ。

ユリ「糖分とってしゃきっとしなさい、あ、お仕事はポスター印刷までだからね？社長のカツラ取っちゃダメよ？」

『は、はい！ありがとうございます！』

手に残ったキャンディを握りしめてユリさんの背中を見送った。

言われた通り口に入れると広がる甘いイチゴ味。

ほうっと肩の力が抜けた。
パソコンの画面と書類しか見てなかった私は初めて部屋を見渡す。

沢山の人がいた。

みんなで、作り上げていくんだって改めて感じた。

私はどうも変に真面目で頑固で神経質なところがある…と最近気づいた。

周りにこんなに頼れる人がいるって知っているのに、わかってなかった。

もっと肩の力を抜かなくちゃ…。