夕焼け色に染め上げて 参【文スト】

かわいい部下とデートしてみた 5 ページ20

「悪りぃ、思ったより並んでてな。」

中也が戻って来たのは三十分程経ったころ。
Aは男達の誘いを断り続け、もうくたくただった。

「疲れました……中也さん、か・ん・み〜！」

倒れかかってくるAの口にチョコバナナを突っ込む。

「もごっ、…危ないじゃないですか。」

そういう割に、あっという間に口の中に消えて行くチョコバナナ。
中也の手にも、もう一本ある。

「何でチョコバナナ？」

「ジャンケンで勝って二本もらった。団子もあるぞ。」

団子だけだとAは満足しないだろうと思ったのだ。

「中也さんがチョコバナナジャンケン……。」

吹き出しそうになるAを一睨みする。
誰のためにしたと思っているのか。

「いよいよ混んできたな。」

確か夕方からイベントがあった筈だ。
夜桜目当ての客も増えてくるだろう。

と言っても、こいつ結構疲れてそうだし、明日からまた仕事だからな。

「歩いて桜見ながら帰るか？」

「そうですねー、さすがにもう食べられない。」

起こして、と言うように手を差し出すAの手を取り、引っ張り上げる。
すると、その手を繋いだまま歩き出すA。

「お、おい。」

戸惑う中也に、Aは少し挑発的に口角を上げる。

「今日のデートはどうでした？」

中也を振り返るAが、やけに大人びていた。

「……部下が、いつもより大人っぽくて……かわいかったです。」

Aは満開の桜の中で、花のように笑う。

「満点です！」

Aの頬が桜色に染まっているのは、頬紅のせいなのか、中也にはわからなかった。

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