Episode93 ページ45
ジェーンはチャーリーから全てを聞いた。
正しくは、チャーリーの境遇以外の全てを。
あまりのショックに言葉を失ってしまう。
お父様が叔父様に殺されたなんて、それもお母様のために。
ジェーンは心の何処かで、ブライアンは本当に親切心で二人の世話を引き受けてくれたのだと思っていた。
近しい人を亡くしたショックで、心が不安定になってしまっただけだと。
でも違った。
ジェーンを見る目に宿る、あの絡みつくような熱は気のせいではなかったのだ。
「姉様、逃げて。」
「逃げるって……叔父様から？」
チャーリーは異能力を使ってはいない。
ジェーンを無理矢理動かしたりしたくなかったのだ。
「でも、二人で何処に行くの？ウェールズには帰れないし、日本へなんてどう行けばいいのか。」
手助けしたことがバレればリチャードも危ない。
自分達だけで逃げなくては。
必死に考えを巡らすジェーンに、チャーリーは静かに首を振る。
「僕は行かない。姉様一人で逃げて。」
チャーリーの言葉にジェーンは悲しむような、怒ったような表情になる。
「何言ってるの、貴方を置いていける訳ないでしょう？それじゃ私、生きていく意味がないわ。」
「そんな事言わないで。姉様だけなら何とでも生きていける。」
今度はチャーリーが同じような表情をする。
「それにこの空間から出たら、僕は何もできないチャーリーに戻ってしまう。だから僕を置いて逃げて？」
「絶対に嫌。」
ジェーンは頑として譲らない。
「……言いたくなかったけれど、…僕はきっと長くない……。」
チャーリーにはわかっていた。
もともと弱かった自分の身体、それが長い間閉じ込められ、痛めつけられた事によって少しずつ終わりに近付いて行っていることが。
「そんな……どうして！」
自分のせいで……。
ジェーンは強くチャーリーを抱きしめる。
痩せ細った身体。
どうしてこんなになるまで気が付かなかったのか。
止まらない涙がアルジャーノンに落ちる。
「明後日、叔父様がイタリアへ発ったら、こっそり家を出て。しばらく街に身を隠して、叔父様が帰ってくるまでに日本行きの船に乗るんだ。」
ブライアンは二週間は戻らない。
チャンスはそこしかない。
「このことを、僕のことを�猖困譴覆い� "。」
精神空間での記憶を留める方法はただ一つ。
忘れないで、と言うこと。
「生きて、逃げて姉様。」
その言葉を最後に、ジェーンは目を覚ました。
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです！！ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (
レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：noel | 作成日時：2020年3月30日 9時
