Episode55 ページ5
翌朝、Aは中也に連れられ、とある人物を訪れた。
「よう来たのぉ中也。鴎外殿から話は聞いておる。」
今Aの目の前にいるのは、絢爛な着物に身を包んだ長身の女性。
か、かっこいい。
姿勢の良い立ち姿は真っ直ぐ芯が通っている。
指の先まで意識が行き届いた優雅な振る舞いに、Aは眼を奪われた。
「今日はこいつがお世話になります。」
中也の言動にはこれ以上ない敬意が含まれており、女性への尊敬の念が窺える。
しかし、森への忠誠的な態度とは違い、その中にはある種の親しみが込められていた。
「ふふふ。お主がAじゃな。噂は聞いておった。まさかあの中也が女子を部下に取るとはのぉ。」
「ふ、藤崎Aです。」
女性の纏う雰囲気、中也の態度からか、Aは珍しく緊張しているようだ。
そんなAに女性は優しく声をかける。
「そう固くならずとも、中也の部下を虐めたりはせぬ。
差し出された手に、握手を交わすと、花のような芳しい香りが鼻をくすぐる。
「今日は特に外へ出る仕事もなき故、Aは私に任せて、中也も安心して任務へ向かうが良い。」
「ありがとうございます。A、今日は一日安静にしとけよ。」
Aに一言釘を刺すと、紅葉に恭しく一礼し、中也は部屋を出て行った。
紅葉と二人で部屋に残されたA。
チラッと紅葉を見遣るとニコニコとAを見つめている。
「お主、珍しい瞳の色をしておるなぁ。ちと此方に寄って良く見せておくれ。」
紅葉に手招かれ側によると、指の長い美しい手がAの頬に添えられる。
「おぉ、可愛らしい。綺麗な髪じゃ。中也は中々見る目があるようじゃのぉ。」
中也の前では見せなかった、少女のようなキラキラした瞳でAを見つめる。
意外に親しみやすい人なのかな？
先程までの上品な雰囲気の中に、Aに対する興味のようなものが滲んでいる。
緊張のほぐれたAが微笑むと、紅葉は急にAを抱き寄せた。
「ん〜！もう我慢ならん！私は美しいものには目がなくての。此方に来い。昔の私の着物がたくさんあるのじゃ。お主なら赤や紫が似合うじゃろう！」
途端に買い物を楽しむ少女のように楽しそうな表情でAの手を引く紅葉。
Aも男ばかりの組織の中、久々の同性との関わりが嬉しかった。
やっぱり可愛い人だ。
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです！！ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (
レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：noel | 作成日時：2020年3月30日 9時
