Episode84 ページ35
母親?
中也もこれまでの話を聞き、リチャードがAに告げた父と母の死は嘘であることを見抜いていた。
「彼女の母親は日本人じゃ。」
その事実に中也は目を見開く。
……なるほどな。通りで日本語が上手いわけだ。
思えばAが日本に来たのも、無意識のうちに母親の影を追っていたのかもしれない。
「ブライアンは彼女を愛しておった、異常なほどに。だが彼女はブライアンには目もくれず、ジェーンの父と結婚した。初めは奴も諦めようとしたさ、それでも諦めきれなかった。そして十年前のあの日、あいつは自分の実の兄を、……権力争いに見せかけて殺したのじゃ。」
それがAの父の死の真相。
ブライアンの追手を逃れるため、母親は子供を連れて身を隠したのだろう。
しかし五年も経たずに見つかってしまった。
「ジェーンはあの金髪以外、母親そっくりじゃった。血に染まったジェーンを見たブライアンは、今まで以上に心を奪われ、ジェーンに殺しをさせるようになった。」
殺しをしたとなってはもう表世界に出ることはできない。
それは、Aを自分に依存させるための手段でもあったのだろう。
「幸か不幸か、ジェーンには才能があった。それに加えて、任務に失敗すればまた誰かが殺されるかもしれない。そうして彼女は、三年のうちに数え切れないほどの成果をあげた。」
幼い子供が暗殺者として活躍する事例は、裏社会では少なくない。
幼い見た目で相手を油断させ、素早い動きで息の根を止める。
Aの見た目ならたやすい事だっただろう。
「一ついいか。」
中也が初めて口を挟んだ。
ずっと引っかかっていた事。
リチャードが一つだけ、話の中で触れない事。
「そのチャーリーは、三年間どうしてたんだよ?」
何処にいたのかも、何をしていたのかも、リチャードは決して触れない。
リチャードがきまりの悪そうな顔をする。
「悪かったと思っている。しかしどうしようもなかった。私は結局、ジェーンを救うことしか考えていなかった。」
リチャードは神に懺悔するように天を見上げる。
「チャーリーは三年間、ずっと……冷たい地下で、ネズミとともに、時々機嫌を損ねたブライアンからの暴行に耐えながら……弱っていった。」
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時