数学はカフェの珈琲と共に ページ13
【鶴崎side】
「勉強時間くらい...お姉ちゃんに負けたくなくて。」
つぶやくように言ったその一言。
...彼女が数学を極めた本質的な理由が少しだけ、見えた気がした。
「お姉ちゃんって、光ちゃんのことだよね?」
もう少しだけ話を聞ければ、
彼女が数学を極めた本当の理由が分かるかも知れない。
多分それが、水上の言う「本当かどうか確かめる」ということだろう。
けれど、彼女は、こくりと頷くと、閉口したまま何も喋らなかった。
「そっか。ありがとう。」
さっきまで意気揚々と話ていた彼女も、黙って俯いていた。
あまり人には言いたくないことなのかも。
なんだかとても申し訳ないな。
「ねえねえ、鈴木さんはオセロってやってる?」
話が続かなくなった時のために用意していたオセロ版。
使い時だろう。
「久しくやっていないですね。」
彼女の瞳に光が戻ったことを確認して、微笑む。
彼女が乗ってくれるようで助かった。
断られたら困る。
「僕とさ、対戦しない?」
驚いたように口をぱくぱくさせると、生気が完全に戻って来たその顔に、にっこり笑みを浮かべた。
「鶴崎さんが良ければ、ぜひお手合わせ願います!」
*
「うわぁ...。」
彼女は、オセロ版を眺めると感嘆の声をあげた。
4枚差。
4枚差で、僕の勝ちだ。
「久しくやってないって本当?」
彼女は強かった。
危うい場面は何回もあったし、正直彼女が別の所に打っていたら、結果は逆だったかも知れない。
「本当ですよ。ただ、東大王で鶴崎さんのオセロは知っています。それでも鶴崎さんが勝ったのは、やっぱり強いんですよ!」
「そう言われると照れちゃうな。」
腕時計をちらりと見ると、7時から来ていたはずなのに、時計は9時を回っていた。
彼女はカフェオレを飲むと、あまりの甘さに少し顔をしかめた。
子供用のカフェオレは彼女に幼すぎたかな。
今度はもう珈琲でもいいかもしれない。
「長く滞在してたね。そろそろお開きにしよっか。」
カフェを出て、数分たった時、ポケットに入れていたスマホが震えた。
電話だ。
「水上颯」
そうかかれた画面を一瞥すると、電話に出る。
「どうだった?」
"彼女は。"そう言いたいんだろう。
単純明快な質問。
水上らしい。
「想像以上だよ。彼女の可能性は未知数だ。」
電話の向こうの水上は無言だった。
ー"数学はカフェの"シリーズ終了
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そら(プロフ) - おーちゃんさん» ありがとうございます!最近スランプ気味?で行き詰まってます...。上手く文章に起こせなくて...。ゆっくり更新していこうと思います! (2019年10月26日 9時) (レス) id: 3ba3df2a95 (このIDを非表示/違反報告)
おーちゃん - めっちゃ好きです。もう一つのやつも好きです。素晴らしすぎてすごいです。(語彙力崩壊) (2019年10月17日 20時) (レス) id: 23068de1a1 (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - え!?よろしいんですか!?ぜひお願いします! (2019年9月11日 18時) (レス) id: 3ba3df2a95 (このIDを非表示/違反報告)
まるり - あの!イメージ画を描かせていただけませんか? (2019年9月10日 21時) (レス) id: b4df52275d (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - まるりさん» コメントありがとうございます!文才!?嬉しいです!ありがとうございます! (2019年9月3日 5時) (レス) id: 3ba3df2a95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩 | 作成日時:2019年8月30日 18時