【歌い手】LIVEで会っただけ【男主】

［０１］ ページ2

IN_____幕張メッセ



「ねぇ、見て見て！」


「うわあ…すっごい顔整ってるね…」


「あれ？私前もあの人見かけたよ。たしか…それもまふくんのライブだったはず…」


「じゃあ、結構参戦してるのかもね！」


「だね〜。うちら２人は初参戦だし、」


「頑張って銀テ取ろうね！」


「とか言って〜、取れなかったらどうしよう、私泣くんだけど…」


「大丈夫だって、頑張ろ！」






そんな会話を小耳に挟む。






そして、自分のチケットを確認する。






Ａ ８番






今までどんな倍率でも一桁をキープしてきたから、やっぱり今回も一桁。






この席はすごくいいみたいで、まふくんが一番よく見れる席。






俺とまふくんは同い歳で、まふくんが歌い手を始めて動画を出したその日に、俺はまふくんの第一リスナーになった。






今みたいに、フォロワー１００万人なんて桁じゃなくて、俺のフォローだけでフォロワーが１、つまり、まふくんリスナー最古参が俺。






こんなに凄い存在になるなんて思ってもいなかった、って訳じゃない。






それこそ、最初はぎこちなさが残ってはいたが、初投稿にしてはきちんと出来ていて、音も意識してとれていた。







まふくんは将来ビックになるな、と希望を密かに抱いてはいたけれど、ここまでとは俺も驚いた。







だけど、俺との距離は全然変わらなくて、実はというと俺は本垢の方から、まふくん直々にフォロバを貰っている。







そう、お互いの１フォロー、１フォロバは、俺とまふくんだ。







今でもDMでのやりとりは、お互い習慣のようになって欠かせないし、唯一リスナーの立場で彼を深く知ることが出来ているのは、俺。








まあ、そんなこんなでまふくんとはまだまだ仲良くしていくつもり。







だけど、会う予定はない。







最低限のリスナーとの壁はいくら仲が良くても守らなくてはならないものは必ずある。







だから、ライブで一方的見て、DMでやりとりをする。






他からすれば、奇跡レベルな光景だけど、俺からしてみてもそれだけで良いんだ。







これから起こることも知らずに、俺は開演時間を待った。

［０２］→←［００］

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す