Just be Friends【そらる】

#38 ページ40

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「別れよう、梓ちゃん。」








言った。
言ってしまった。

自分で決めたことなのに、どうしてこんなに胸が痛いんだろう。

張り裂けるように、苦しいんだろう


後戻り、できないのに。





沈黙が流れる。

スマホの向こうで、ガタッと音がした。



『な、なんでですか』

「限界やから」

『私何かしましたか…？』

「ううん。梓ちゃんはなーんもしてへんよ。
俺が限界なんよ」



ハッと息を飲む音がする。



「梓ちゃん」

『っ…何ですか』

「逃げちゃ、あかんよ」




え、 という声が聞こえる。

自分でも気づいてないのか、それとも気づいていないふりをしているのか…
俺にはわからないけれど、ちゃんと気付かせるべきだというのはわかった。



「梓ちゃん、そらる さんのことまだ好きなんやろ？」

『……私は、享さんのことが…』

「気をつかわんでええんよ。
梓ちゃんが本当に好きなのはそらるさん…彼方さんなんやろ？
ずっと前からそうやったやろ？」

『…っはい』

「でも、今の梓ちゃんは そらるさんが好きっていう気持ちから逃げてる。蓋をして、気付かないふりをして、俺と接してる。
それじゃ、だめや」

『…』

「自分の気持ちには、素直にならなあかんよ…？」


『でも、それじゃ…私を好きって言ってくれてる享さんに…悪いじゃ、ないですか…』



涙で濡れた声。時折聞こえる嗚咽。
ここで揺れちゃだめだ。

ちゃんと伝えなきゃ、



「梓ちゃんが悪いなんて、俺一言も言ってへん。
俺は梓ちゃんに言うたはず。
"そらるさんを好きでいてもいいから、付き合ってほしい"って。
俺は、よかったんよ。そらるさんを好きでいてくれてて、よかった。

そらるさんを好きな梓ちゃんを見るのが、幸せやったから」

『…っ、とおるさ…』

「梓ちゃん、泣かんで。
自分の気持ちに素直になって、自分が幸せになれる道を選んで、な？」

『…は、っい、はい…！』

「梓ちゃん、





愛してました」


『享さん、こちらこそ、今までありがとうございました…っ！』






たった半年。

ううん、半年も 付き合えたことが奇跡やった。

隣で幸せそうな顔を見れたのが嬉しかった。
幸せやった。




「また、会社でな」




ぷつっと切れた電話。

ツーツーという無機質な音を聞いた瞬間、涙が溢れた。




"好き"という感情と、"諦めよう"という思いが混ざり合う




「ありがとっ、う」






どうか幸せに＿




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