Just be Friends【そらる】

#31 ページ33

〜彼方(そらる) side〜








「告白、されてたんでしょ」









ー前日の夜ー



レコーディングの途中に着信音が響き、スマホを手に取る。

画面に表示されたのは "翔太" という文字



「もしもし？」

「あ、彼方さんですか？」


俺のスマホにかけてきたんだから、俺以外のやつが出ることはまずないだろ と言えば、電話の向こうからちょっとした笑い声が聞こえる


「あは、そうでしたね」

「うん。…で、どうしたの？」


用件を聞こうとすれば、悩むように唸る翔太。

茶化さないでくださいね、と言われ当たり前だと返事すれば


「明日、俺、梓ちゃんに告白するつもりなんです」

「え、」


思っていた内容と違っていて、変な声が出る。
翔太が梓を好き？

歌詞に訂正箇所を書くために持っていたシャーペンが滑り落ち、床で跳ねた。
その音でハッと我に帰り、シャーペンを拾って椅子に座りなおす


「え、お前 梓が好きだったの」

「そうですよ〜。梓ちゃん鈍いから気づいてくれないんです」

「へ、へぇ…」


沈黙が流れる。
何を言えばいいのか分からなくて、俺は口を結んだ。

画面の向こうから息を吸った音がしてこわばった声で 名前を呼ばれる
明るい声ではない、低い声。

呼びかけに応えれば、少し憂いを帯びたような声で




「俺のこと応援してくれますか？」




放たれた言葉に、俺は即答できなかった。

応援しなくちゃいけないのに、黒い霧のようなものが思考の邪魔をする

もやもや、する


素直に応援できない
自分の心に嘘をつかなければ、いけない




なんなんだ……この気持ちは




「やっぱり、迷うんですね…」


苦笑したような声が耳に入る。

迷ったのは事実。弁解するつもりはなかった。
ただ、何故 自分が迷っているのかが分からない。
応援したいはずなのに、


自分の"気付きたくないもの"が邪魔をする





「彼方さん、なんで自分が迷ってるのかわかりますか？」

「え、分からない」

「…俺が彼方さんの恋敵(ライバル)だからです。
彼方さんは自分じゃ気づいてないだろうけど、梓ちゃんのこと好きだから」


梓ちゃんとあなたはよく似てます、という言葉までもが胸にストンと落ちてくる

……梓のことが好き、か



「明日、13時に中庭のベンチ前で告白します。結果が知りたいなら、来てください」



プツッと切れた電話の音を聞きながら、俺は気づくまいとしていた梓への思いを

自覚した

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