Just be Friends【そらる】

#13 ページ15

〜センラside〜

俺のよく来るバーに着けば、初めて "バー" に来たらしい梓ちゃんは興味津々に店内を見渡した。
暗めの店内は落ち着いた大人の空気が流れる。


『ふふ。センラさんのソロアルバムの"non defective"のバーに似てますね』

「あ、non defective知ってるんや」

『ていうか持ってますよ。浦島坂田船の中でいうなら私はセンラーですから』


"センラー"という言葉に少し気持ちが高ぶる俺は単純なのかもしれない。
あぁ、もう、不意打ちはズルい

胸の内を悟られたくなくて、余裕なフリして
梓ちゃんの髪をそっと掬うとそっと口付ける。


「これからも俺を…センラを好きでいてな？」

『そっ、それはズルいですよ！』


上ずった声で梓ちゃんは言う。
顔真っ赤、かわええ。
やっぱり好きやわ、梓ちゃんのこと

カウンター席に座って、それぞれ注文する。
俺はジントニック。梓ちゃんは女子がよく頼む定番のカシスオレンジ。

俺がよく飲むジントニックというカクテルは、まあもちろん味も好きだが、カクテル言葉が1番好きだ。

梓ちゃんに贈りたい言葉だから。
絶対言わへんけどね。


『船山先輩って金髪なのに髪質いいですよね』

「そう？」

『染めたら髪痛むじゃないですか。でも船山先輩の髪は傷んでるように見えないんですよね〜』

「褒めてくれてるん？」

『当たり前じゃないですか』

「そっか。ありがとうね」


ふにふにと片方だけ長い俺の髪を触りながら、梓ちゃんは小さく呟く。


『彼とは…大違いです』

「彼って東京で会った人？」


聞こえてたんですか、と驚いたように言う梓ちゃん。
聞こえてるに決まってるやん、意外に顔と顔の距離近いねんで。


『彼の髪は黒くてふわふわしてるんです。ところどころ少しはねてて。船山先輩はさらさらしてるけど、彼のはふわふわだった』

「そうなんや。…その彼氏さんはどんな人やったん？」

『きっと船山先輩も知ってる人です。有名だから』


一瞬、耳を疑った。
俺の…知ってる人…？


「だ、誰なん…？」







『歌い手の《そらる》こと紺野 彼方、です。』









.
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ジントニックのカクテル言葉

「強い意志」「いつも希望を捨てないあなたへ」

#14→←#12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す