雨の日、ネコ日和。【さとみ】

残夜。 ページ20

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『さとみさん…貴方は私の初めてのキスの相手だよ。そして私の最後のキスの相手でもある』


何度か触れるだけの甘いキスを交わしてゆっくりと彼女を起こし椅子に座らせる。


押し倒したくせにキスで終わらせるなんて意気地なし？

そう思われても構わないが彼女と俺からしたら
愛を感じるにはそれだけで十分すぎた。



｢すき。だいすき。愛してる。ちょー愛してる。最後のキスなんて言わせねぇから｣


『…っ！ばか、あほ！私も好き…だから』



｢え、愛してる、じゃなくて？｣



意地悪すればもうさとみさんなんて知らない！って
顔を背けるのも全部大好きだよ。



愛おしい、愛してる。



そんな単純な言葉でしか今の感情を上手く伝えられないがどんな複雑な言葉でこの感情を色飾るよりも不格好な言葉の方が似合っていると俺は思った。







ねぇ、こんな幸せな時間、いつまで続くと思う？


君はずっと、俺の隣にいてくれる？


消えたり、しないよね？


ずっと俺らは一緒にこの先も生きて行くんだよね？



どうやったら俺は君を心の中に閉じ込めておける？




放っておけば君はやはり消えてしまいそうなんだ。




そんな不安、全部消し去るように貪るように愛してよ。




｢A｣


全ての感情を彼女の名前に込めた。



美しい姿をした彼女は優しく俺を振り返る。





『なんですかっ！』





この子の存在を知る者はやはり俺だけでいいんだ。




その感情がたった今確かなものとなる。





｢愛してる｣



何回 愛を囁けば気持ちは落ち着く？


どうか俺の元から消えてなくならないで。






少女がいなくなると決まった訳では無いのに何故かこの子はいつかどことなく去ってしまうという不安が消えてなくならないのだ。




そんな寂しい愛だったと思う。



あまり自分でもよく分かっていないのだ。

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