夕時。 ページ15
・
「どう?美味しい?」
ただ家にあった簡単な食材で作っただけなのに一から全部俺が彼女の為に作り上げたと都合の良い勘違いをしAさんに感想を求める。
『ん〜っ!おいひすぎまふ!』
口にいっぱい詰め込む姿はハムスターのようだ。
愛くるしい小動物そのもの。
箸を使うのが苦手なのか上手く掴めないという
そんな彼女の欠点ですら愛することが出来た。
『ごはんツヤツヤしてる〜!宝石みたいに白いですね!』
「だろ!俺ん家の米うまいんだよなぁ」
ただスーパーで買っただけなのに彼女に褒められると調子こいちゃう。
Aさんは食材一つ一つを丁寧に口へと運び味を噛み締めている様子。
『人間っていつもこんなに美味しいもの食べてたのかぁ…!』
「大袈裟だなぁ。お前がいつも食ってるのと同じだろ」
『えへ、私が料理上手に見えます?』
「悪いけどそうは見えないわ」
"ばかっ!"
怒ったように頬を紅潮させ、でも楽しそうに食事をとる彼女がとても愛おしくて堪らなかった。
この何処から現れたのか分からない謎に身を包んだ同い年の少女の存在を俺は誰にも教えたくなかった。
…見せたくなかった。
それは親友のなーくんにもジェルにも言えることで、絶対に見せたくなかった。
『さとみさんのご飯美味しいっ!もういくらでも食べれるよ!』
「Aさん、言っとくけどそんなに褒めても何も出ないからな」
こんな純粋で美しい君を知っているのはこの世で俺だけでいいんだ。
暖かなオレンジ色のライトが俺らの幸せな空間の象徴のように思えた。
君がいるだけで雨の世界は色めき輝くんだよ。
その一方で相変わらず窓の外の世界では雨が大きな音を立てて降っているようだった。
234人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時