誰 か さ ん 。 【黄】

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「Aは何しててもいつ見ても元気だから、好き」


『え、そうですか？私ってそんなに元気に見えますか』



これは、さとみ先輩と付き合う直前の会話である。
たしか、ゼミの都合で仲良くなった3回目のデート。


ちなみにこれは告白ではない



たまたま、観たかった映画が被った。
それは、誰かさん と付き合うきっかけになった出来事と
全く同じだった。

何かが始まるかもしれない
少しだけ淡い期待を抱いた……のは私だけかもしれないが



「Aは少し抱え込みすぎて1人で勝手にパンクして壊れるけど、そういうところも好き」


『え、そんなに私我慢してるかな』


「もう少し俺を頼れよ」



これは、さとみ先輩と付き合って半年後の会話である。


普通に家デートしてる時に、サラリと言われた言葉。
私はただパソコンと睨めっこしていた。
彼は多分、就活。



『私はさとみ先輩の自分を貫く姿が、好きです』

『私はさとみのストイックすぎるところがすこし怖いけれどそんなところも、好き』


これは、私が"さとみ"という人物について放った一言である。

どちらが付き合う前で付き合った後なのかなんて
説明するまでもないだろう。



〜だから好き
これはただの、恋だ

〜なのに好き
ここからは、もうどうしようもない愛なのだ



誰かさんは、『〜なのに好き』に至るまで私を愛してくれなかったな。


付き合ってるのに、両想いなはずなのにまるで私の片想い。



いつだか誰かさんと別れてから読んだ本に書いてあった。



"両想いなど存在しない。いつまでもお互いがお互いに片想いしているだけだ"





『ねぇ、さとみ』


なんとなく、彼氏に聞きたくなった


誰かさん が、頭をチラついて離れないから。



『今からする質問に答えて』


「面接官みたいな突拍子もない理不尽な質問される気がするのは俺だけ？」


なんて口で笑かしながらも就活で忙しいだろうにしっかり手を止めて、メガネを外して、それから私の入れた温かいコーヒーを1口含み、丁寧に身体ごと私の方を向いてくれるさとみが、



たまに、好きなことに夢中になりすぎて私を放っておくところもあるけれど、



わたしは大好きだと想える。




『まずは大学名とお名前を教えてください？』



日差しが部屋に入り込む。
心が暖かい。


誰かさん は 私の幸せそうな姿を見て
何処かへ隠れたみたい。



さぁ、答えて見せて。

"私のここは苦手だけどそんなところも好き、みたいな贅沢な我儘"

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