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「それではこのまま国公立大学を目指す方針で」
『娘の成績での合格率ってどれくらいですかね』
過去のクラスメイト
大切な幼馴染
過去に恋した女性
そんな枠を突破らって他人行儀。
丁寧な口調
僕らはもう
"担任" と たまたま受け持つことになった"生徒の保護者" でしかない
「模試の成績を見れば問題ないかと思われます。…ただ、気を緩めずこのまま努力し続ければの話ですが」
『ほんとですか!よかったねぇ!』
そう言って娘に強く抱きつくのは僕の知らない母親の顔をしたA
「お母さん恥ずかしいよ」
それを優しくやんわりと逸らす娘は学校と同じく家でもしっかり者なんだと察する。
何となくあの旦那の顔が思い浮かんでは少し目の辺りとか似てるなぁと思いつつそっとそれは胸の内に閉まっておく。
「…僕からはこの辺で以上ですかね」
"他に何か聞いておきたいことはありますか"
決まり文句を僕は教師の顔をして君に言う。
バインダーをきっちりと閉めてペンを胸ポケットにしまう。
大抵の親は
「特にありません」
少し心配性な親は
「学校での様子はどうですか」
そう問われたりする。
だが、Aは、この保護者は違う
『先生 、ころんせんせい、』
幸 せ に な っ て く だ さ い ね
「…っあ、」
『ほら行くよ』
呆然と僕と母親であるAの顔を交互に見る娘をしっかりと立たせてからもう一度、彼女は僕を見つめた
『娘のこと、よろしく頼みます』
見たことのない、親の顔。
「…もちろんですよ」
僕は意味ありげなニヤけた顔で答えた。
僕と君だけに分かる何かが通じた瞬間だった
最後の一人の面談を終え、疲れ果てた僕は向かい合った机を元に戻して窓の施錠をした。
夏休み明けからの日直の名前にへたくそな字で書き換えて満足した僕は教室を後にする
泣 く の は も う こ れ で お し ま い だ
Aとその娘を迎えに来たあの旦那の車に乗り込み出発した親子の姿を見て僕は潔くたった1人の教室を出た。
勢いよく、なるべく元気よく職員室の戸を開ければ相変わらず僕の席の隣には埴輪を愛でるおじいちゃん先生がいて、僕を迎え入れた。
「コーヒー、入れておきましたぞ」
「へへ、ありがとうございます」
「ころん先生随分と上機嫌じゃないかね」
こんなにも気持ちを揺さぶるのは
"あなただけだから"
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眠民。 - ころんさんの小説久々にみたのですが‥雰囲気大好きです🤞🏻🤞🏻私的にはハピエンだと思いました。 (2月8日 18時) (レス) @page39 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
なむなむ(プロフ) - すんごく良かったです!私は最後少しモヤモヤしちゃったんですけど、おもしろかったです!\(^-^)/ (2023年4月14日 17時) (レス) @page39 id: da249a0fb7 (このIDを非表示/違反報告)
ふわち - 読んでるとき、思わずないちゃいました…。すごくおもしろかったです! (2022年8月19日 11時) (レス) @page39 id: ed311d2c92 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - かけちゃってるんですから。恋って、すごく苦しいものだけど、このお話の恋はその中でも苦しかったです..。報われないなって。長くなっちゃいましたが、考えられるお話をありがとうございました! (2022年8月17日 9時) (レス) id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - 颯桜さん» このお話、読んでて本気で泣きそうになりました。すごく切なかった...。映画化してほしいくらいですw人間の汚いところとか、逆に苦しいくらいに綺麗なところとか、本当にぐわってきました。ハッピーエンドかもしれないけれど、残酷ですよね。人生の半分を幼馴染に (2022年8月17日 9時) (レス) @page38 id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年10月3日 20時