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『なんだか変な感じ』




無言の空間を打ち破ったのはAだった






『幼稚園の頃からずっと一緒の幼馴染が教師として娘の担任やってるとか信じられない』





「…僕だってまさかお前の娘の面談するなんて今日まで夢にも思ってなかったよ」






何だか恥ずかしくなって僕は生徒の成績が纏まったバインダーを強く握り直した。






"あの頃は大嫌いなにんじん、よく食べてもらってたな!"


なんて頬を掻きながら未だに僕とは目を合わせずにそう言い放つ。




『ころん、本当ににんじん好きだったからつい甘えちゃった』





そこでようやく振り返った君は屈託のない笑顔で僕の心臓を貫く。





僕は、今になってその当時から幼いながらにAへの淡い恋心を抱いていたことを知った。






「あぁ────────」






"僕もにんじん、嫌いだったよ"





換気のために開けていた窓から夏の空気が再び僕らを取り巻く。



校庭には生徒のように大きく育ったひまわりが揺れていた。






『え、嘘でしょ? 嬉しそうに食べてたじゃん』





「さぁ、どうでしょうねぇ」




その無い頭で考えてみてくださーい



なんておどけた調子で誤魔化せばだんだんと時空が歪んであの高校時代に本当に戻ってしまった気持ちになった。






『えぇ?先生がそんな大人気ない態度でいいんですかー。校長に態度がなってないって報告するよ?』






「ひぇ!それだけはやめてください神様仏様A様!」



そんなやり取りをしていたら過去に絵を馬鹿にしあったこと、足の速さを互いに晒し罵りあったこと



本当にくだらない友人としての記憶が蘇る。






なんて鮮明なんだ







僕の心から離れて消えてくれない









その思い出どれもがバカバカしいと大人になった今では思う




実際、くだらない。




誰からどう見てもくだらない。





なのに、こんなにも素敵な思い出なのは全てAとの思い出だったからなんだ。






「……きえないで」





どこか走馬灯のように思い出を振り返った僕は咄嗟に儚い言葉を口にしていた。







聞こえたのか聞こえていないのか分からないがAは未だに僕に優しい瞳を向けて黙りこくっていた




否、聞こえていないわけが無い





隣のクラスの女教師の甲高い声がやや廊下に響いてはいるが教室には僕と君の2人きり




あの頃と同じ、 2人きり






綺麗な記憶のまま思い出せるのは君が恋人じゃなくて


"友人だったから"

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作品ジャンル:恋愛
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眠民。 - ころんさんの小説久々にみたのですが‥雰囲気大好きです🤞🏻🤞🏻私的にはハピエンだと思いました。 (2月8日 18時) (レス) @page39 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
なむなむ(プロフ) - すんごく良かったです!私は最後少しモヤモヤしちゃったんですけど、おもしろかったです!\(^-^)/ (2023年4月14日 17時) (レス) @page39 id: da249a0fb7 (このIDを非表示/違反報告)
ふわち - 読んでるとき、思わずないちゃいました…。すごくおもしろかったです! (2022年8月19日 11時) (レス) @page39 id: ed311d2c92 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - かけちゃってるんですから。恋って、すごく苦しいものだけど、このお話の恋はその中でも苦しかったです..。報われないなって。長くなっちゃいましたが、考えられるお話をありがとうございました! (2022年8月17日 9時) (レス) id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - 颯桜さん» このお話、読んでて本気で泣きそうになりました。すごく切なかった...。映画化してほしいくらいですw人間の汚いところとか、逆に苦しいくらいに綺麗なところとか、本当にぐわってきました。ハッピーエンドかもしれないけれど、残酷ですよね。人生の半分を幼馴染に (2022年8月17日 9時) (レス) @page38 id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年10月3日 20時

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