あなただから。【青】

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放課後、午前授業だった学校には生徒は誰も残っていない。



なんなら教師すらそんなに多くは残っていない。



そんな校舎に僕の靴の音がリズミカルに響く。




卓球場に入って見れば何となく部活時代を思い出して誰かの置き忘れのラケットを握って素振りをしてみた。




音楽室に入ってみればクラスメイトに地声はガサガサなのに歌声はいつも綺麗だねといじられたことを思い出した。




廊下に掲示されている生徒会スローガンを見て、
大して意識もしたこと無かったくせに僕が通っていた時代のものを必死に思い返してみたりもした。




そして、Aの香りのするような


Aとの思い出が強い教室にたどり着いた。




3年1組


あぁ 僕は この教室で ただの幼馴染に 何度恋をしたことか




付き合っていると噂されて恥ずかしくなったこと



素っ気ない態度であしらってしまったこと


友人がAに恋をしてしまったこと






なんて儚くて脆くて美しいのか





この世に存在する言葉等では到底語れないほど恋しい世界






1秒事 出会った日が遠ざかっていく




なんて悲哀的



自暴自棄にもなるもんだ。









……ん


……ろん






『こ！ろ！ん！』





────はっ！






慌てて顔を上げて周りを見渡す。




そこにはあの頃から何十年かの時が流れていた。







教室の後ろに僕の名は刻まれていないし


彼女が賞を取った絵も跡形なく姿を消している





代わりにあるのは────



知 ら な い 生 徒 の 名 前 の 羅 列





それは僕にとっては異物で、吐き気を伴った





そうだ



僕は 夢を見ていた







｢先生、そこ俺の席なんだけど｣




代わりに僕の名を呼ぶのは帰ったと思われたこの高校の生徒




"あぁごめん "

なんてあくまでも冷静な態度をとる。






今も 夢なのか現実なのか分からない世界観で


ずっとずっと恋をしているのは きっと





"あなただったから"









─────────あなただったから





だったから、





何なんだ。

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