あなただから。【青】

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｢分からないことがあれば何でも私に聞いてくださいね。必ず力になります｣




人事異動があって、新しい高校の校長の元へご挨拶に伺った。


いい人そうでなにより。





Aへの淡い想いを打ち切ってから、幾度か春が巡った。




教師はやりがいがあってとても楽しかった。

いいことばかりでは無いけれど…




相変わらず彼女は作っていない。





恋になんて惑わされず平和に心を落ち着けて生きる生活に良くも悪くも慣れてしまったのだ。





｢…はぁ｣




1人暮らしの家に向かって、ただいまと挨拶する必要がない僕は代わりに大きなため息を漏らす。







"ころん先生モテるでしょ〜"




"えぇ、絶対彼奴カノジョいるって"





うるせぇガキ共が。




18なんていいよな。



夢を見ていても怒られないんだから。






────────このままずっと一緒だよね




なんて思ってても許されるんだし。






｢…すきだよ｣


｢私も｣


聞くつもりはなくても稀に生徒間のカップルの甘い時間に遭遇してしまう時もあった。





その度に思う






こ の 世 に 永 遠 な ん て 存 在 し な い ん だ っ て







先生として、教えてやろうか？





経験者として、教えてやろうか？







ずっと恋い焦がれた女が他の男と結ばれることの絶望感について。





なんて屈辱な。






｢はいそこ！後ろうるせぇぞ！お前らコソコソ話しないの｣






なーんて。





｢えぇー！だって数学わかんないんだもん｣






僕は無邪気な若さへの嫉妬を人生経験で積上げた嘘の笑顔で隠し通した。






｢ころん先生、これからお暇ですか？もし良かったら今夜私と───｣




女を使ってくる若い教師もいた。




…なんて物好きな。



そしてなんて愚かな。



僕はもう 誰にも 靡かないのに。





｢ごめんなさい。御一緒したい気持ちは山々ですが生憎生徒達の調査書を書き上げるので精一杯で｣





僕は優しい嘘で嫌悪感を隠した。






｢せんせいには…、好きな子、いるんですか｣





禁断の恋というものを好む馬鹿げた女子高生もいるもんだと僕は感心してしまう




毎回数学を聞きに来る勉強熱心な子かと思って評価していたらなんだ。





こいつも愛が欲しいだけなんだ




｢…どうだろうね。先生ももうおじさんだからな｣






あえて年の差を強調する言い方で突き放す。





僕がこんなにも恋情を阻むようになったのは



"あなたへの想いを諦めたから"

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