あなただから。【青】

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「最後に…ちゅー、させて？」



自分の口から突いて出た言葉に驚いた。


"ちゅー"なんて可愛こぶっちゃって。


あえて"キス"と呼ばないのは無駄に大人の色みを出したくなかったから。





これは、お遊びも同然なんだ






この恋から吹っ切れる為に
今後僕が新しい恋が出来るように




『私は拒絶しないよ』



「バレたら旦那さんにお仕置されちゃうね」



満更でもなさそうな君の頬にそっと手を添えて、
唇を宛てがう。




無駄に豪華なシャンデリアが歪んだ僕を照らし上げた。




『っ、』



こんなこと、あっていいのだろうか。




結婚式、新しい家庭が生まれる日に
嘗て片想いしていた他人の花嫁と口付けを交わし合うなんて。




僕はきっと、地獄行き。
来世は愛を知らないモノに生まれ変わる。




ありがとう、大好きだった人


苦しいほど愛した人


結ばれることの無いこの想いを最後に受け止めてくれて



どうもありがとう。


僕は最後まで世界一、大馬鹿(幸せ)者でした。




―――



カチャリと冷たくしまった扉。


"幸せになるんだよ"


偉そうに告げた私を恥じた。
ころんのおかげで素敵な相手を見つけたからには

"ありがとう"


と返すべきだったのではないかと今更後悔する。





「A様お待たせしました」



パタパタとスタッフさんが小走りにやってきたのを視界にとらえて私はピンク色のドレスをそっと撫でた。





「先程の男性は御兄弟ですか？」




『いいえ？私は一人っ子ですよ！』




「あら、それは失礼いたしました」





"とても雰囲気が似ていらっしゃった方でしたので"









彼女が指す男性の正体を知った時、酷く胸が傷んだのは言うまでもない。





私は優しく導かれて再びメイクを施される。


さっき、したばかりなのに







口付けで落ちた淡いピンクが塗り重ねられていった。






「御準備の程は如何ですか」


重たそうな扉が開かれた時、実の旦那を瞳に入れる。





「Aっ！？どうしよう、めちゃくちゃ可愛い」




正面から包み込むように抱きしめらる。
ころんにはなかった安心感を感じた。




そして貴方は貪るように私に口付けする。




スタッフさん達が微笑ましそうに

"リップなんて要らなかったわね"

と呟いた。



もう、ころんの味はしない。




寂しい気もしたがもうこれで何もかも終わり。





こんなにも優しい気持ちになれるのは私の初恋が


"ころんだったから"


なんだよ。

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