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"ころん様"なんて宛先、カッコつけちゃて。



幸せに溢れた文面に、写真───────




「ほら見て、Aちゃん綺麗よ」



…誰が見るもんか。



見てあげないんだから。






他の男 によって綺麗になって幸せなAなんて。






「母さん、僕もう行かなきゃだから」




見ろ見ろと言わんばかりにそれを押し付ける母親に
嫌気が差して家を出るのには早すぎるのに僕の足は玄関に行きたがった。




「あらどうして?Aちゃんの結婚式───」



「絶対行かないから!」





部屋が急にしん、と静まった。







"わたし、おおきくなったらころんくんとけっこんする!"




嘘つき。裏切り者。




"ころんにも結婚式来て欲しいな!"




…どんな顔で行けばいいんだよ。

旦那さんが見てると知らずにキスをしようとした男が普通に結婚式に現れて歓迎されるわけないじゃんか。





それに…





誓いのキスなんて。















僕の靴下に本来の色より濃い跡が着いた。






それはじわりと広がって。


…止まることを知らない。






「…っ、なんで、どうして」






"もうこの感情は忘れたはずなのに"








「ころん…」






その瞬間、視界が定まらなくなった。





近くで声がして母親に抱きしめられていることを知った。



こんなに背、小さかったっけ。




少なくとも僕の記憶の母親はもっと、逞しくて大きな背中で…






「ころん、あんたは過去に囚われすぎている」





未だ涙の止まらぬ僕に、母は優しく語り掛けた。





「ころんは優しいから、過去を完全になかったことに出来ない」






心地よいテンポで身体が振動した。





二十歳を超えた大人が本当に恥ずかしい。









「ちゃんと彼女をこの目で見て、恋に終止符打ってきなさい」







身体が開放されたとともに手に握られた招待状。









そこには旦那さんと仲良さそうに手を繋ぐ当たり障りないひとつの夫婦が仲睦まじく映っていた。









恋に、終止符を。









母が気を使ってなのか花に水をやりに庭へ出た時、
僕は人目も気にせず泣いた。









僕、まだ好きだったんだ。









多分、結婚式がまともにAの顔を見て話せるラストチャンスだと思う。









だったら。


今の僕には何ができるだろうか。






大人になってもなかなか僕をホンモノの大人にしてくれないのは執拗い程脳裏を離れない女が






"あなただったから"

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作品ジャンル:恋愛
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眠民。 - ころんさんの小説久々にみたのですが‥雰囲気大好きです🤞🏻🤞🏻私的にはハピエンだと思いました。 (2月8日 18時) (レス) @page39 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
なむなむ(プロフ) - すんごく良かったです!私は最後少しモヤモヤしちゃったんですけど、おもしろかったです!\(^-^)/ (2023年4月14日 17時) (レス) @page39 id: da249a0fb7 (このIDを非表示/違反報告)
ふわち - 読んでるとき、思わずないちゃいました…。すごくおもしろかったです! (2022年8月19日 11時) (レス) @page39 id: ed311d2c92 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - かけちゃってるんですから。恋って、すごく苦しいものだけど、このお話の恋はその中でも苦しかったです..。報われないなって。長くなっちゃいましたが、考えられるお話をありがとうございました! (2022年8月17日 9時) (レス) id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - 颯桜さん» このお話、読んでて本気で泣きそうになりました。すごく切なかった...。映画化してほしいくらいですw人間の汚いところとか、逆に苦しいくらいに綺麗なところとか、本当にぐわってきました。ハッピーエンドかもしれないけれど、残酷ですよね。人生の半分を幼馴染に (2022年8月17日 9時) (レス) @page38 id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年10月3日 20時

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